ゴミスキル持ちの陰キャは、S級シーカーになる姿を空想する。〜ダンジョン最下層で手に入れた『空想家』スキルで空想を現実にし、オレは最強の仲間を集め、世界を席巻をする。〜
久遠ノト
1-1 ダンジョンの最下層にて
第1部:島国の空想家は夢を描く
プロローグ
「ぼくの将来の夢は、S級の
少年は『将来の夢』を問われ、そう答えた。
それは、世界に突如として現れたダンジョンに潜る冒険家のことだ。
危険な職業だが、ダンジョンがあるのが当たり前になった『V世代』の
少年の将来の夢を皮切りに、まわりの子どもたちも口々に将来の夢を語った。大企業の社長。プロスポーツ選手。世界で一番の金持ち。言ってしまえば、どれもが現実味のない夢ばかりだ。
然れども、子どもは夢が見るのが仕事だ。
ただ、この教室で唯一の大人である『教師』だけが、そんな言葉を聞きながら疲れ顔で笑みを浮かべていた。
そして、数年後に彼らは理解した。
その夢が『期限付き』である、と。
「できるわけがないだろ。いつまでも夢を見てんじゃねぇぞ」
「いい加減、大人なんだから真面目に将来を考えなさい」
「普通に会社員とか、大学に出るとか。そういう目標にしなきゃね」
進路選択に差し掛かると、彼らに降り掛かってきた言葉。
それは、どれも同じ言葉を枕詞にしていた。
──いつまでも子どもじゃないんだから。
将来の夢を子どもに語らせ、成長をすると「無理だ」「できない」と踏みにじる。そして、同じ鋳型にはめ込んで、社会に送り出す。
「努力をして報われる人なんてのは一握りなのよ」
「夢を語って良い時期は終わったの」
「空想と現実の区別をつけなきゃね」
夢を語らされ、できると無責任な言葉に乗せられ、いざ将来選択の頃になると叩き潰される。
そうして、また諦め癖のついた大人が世の中に送り出されるのだ。
だが、彼は違った。
「はいっ! でも、ボクはできるって思ってます!」
真っ直ぐな瞳で、灰色の世界の住人に言ってのけた。
「だから、やります。最強の
少年の名前は、水無瀬
この物語はこの少年が最強の
「はぁ。戻ってこーい」
目の前のくたびれた教師の言葉で、水無瀬は現実に引き戻された。
今は進路選択の話し合い中なのだ。
「なぁ。水無瀬。じゃあ、どうやって最強の
「ど、どうって……えーと……」
「15歳になってスキルをもらったよな。なんのスキルをもらったんだ? 言ってみろ。ほら」
教師の呆れたような声色に、水無瀬は居心地悪そうに目を動かす。
「陰キャ……ぼっち……脳内お花畑」
「そうだな? パーティーを組んだら弱くなるスキルばっかりだ。で、なにになるんだって?」
「……最強の
「そんなゴミスキルでなれるほど、
「ゴ、ゴミスキルでも頑張ればなれることを証明してみます!」
水無瀬も自分のスキルが『ゴミスキル』だということを知っている。というか、スキルが発現した15歳時の周りの反応を見れば必然とそうならざるを得ないのだ。
「そもそも
「……はい」
「パーティーを組めないお前がどうやってモンスターを倒すんだ? Eランクにすらなれない。お前は
「ボクだってモンスターくらい倒せます!」
ゴミスキルだと知っていても、彼の目は諦めてなんかいなかった。
その目にまた大きなため息をつくくたびれた教員。
「水無瀬ぇ……オレはお前のためを思って普通の進路を勧めてるんだぞ。悪いことは言わないから」
「大丈夫です!」
「いや、大丈夫とかではなく。良いスキルを持っていない
「活躍します! だから! 絶対に! 先生も期待してください!!」
「夢を見すぎだ! いいから落ち着け!」
急ぎ早に進路指導室を出ていこうとする水無瀬を教師は引き留める。本来ならここまで注意をする大人の言葉なら、子どもは素直に聞くだろう。
「夢っていうのはね、先生」
だが、こと、この少年──水無瀬
「叶えたいから夢なんですよ。叶えれなかったら諦めますので!」
彼の中には『夢を諦める』という選択肢など準備されていない。
あるのは、ただただ真っ直ぐ夢を叶えるという道だけ。
だから、彼はダンジョンに潜った。
最強の仲間と共に、最強の
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