第7話 やったぜどこどこ

今日も今日とて創作活動に勤しむ

その前に一応確認しておこうかなと...


机の前に座ると、PCのブラウザを立ち上げる。

TwiSterのタイムラインには、自分の曲に反応したコメントがまだ流れていた。


「三人で歌ってるのかと思った」

「それぞれ声の個性が違ってて面白い」

「次の曲も楽しみ」


ざっと目を通すだけで、指先はすぐにスクロールを止める。

深く読み込むことはしない。けれど、確かに待っている人がいる――その感覚だけが胸に残った。


タブを閉じ、改めてフリーのDAWソフトを立ち上げる。

マウスで新しいプロジェクトを作成し、空のトラックを並べる。

ヘッドセットを頭に掛けると、外の音が消え、世界が切り替わった。


録音の時はいつも通りベッドに潜り込むつもりだ。

細いマイク一本だけの、簡素な環境。

それでも、自分にとっては十分すぎる。


準備は整った。

あとは指をキーボードに置き、最初の一音を探すだけだった。

この一音で、これから作り上げる音楽の方向性が決まる。くじを引いているようなドキドキ感と高揚感を持ったまま最初の一音を決めた。

そこからはもう慣れたようなものだ。まだ数曲程度しか創っていないのに作業が加速していく。机に置かれたキーボードを軽く叩きながら、リズムを刻むように足を揺らす。

テンポは速すぎず遅すぎず――疾走感と軽快さの両方を保てるラインを探って...


指先がモニター画面上の鍵盤を走ると、短いフレーズがぽんと跳ねた。

単純に並べただけの音ではなく、ジャズ寄りのコード進行を織り交ぜた響きがヘッドセットを通して耳に心地よい。

「これだ」と思う瞬間にすかさずマウスを握り、PCのDAWにその音を打ち込む。


続いて、ベースライン。

支えるだけでは物足りない。リズムを切り裂き、走らせ、跳ねさせる――

コード進行の裏をすり抜けるような、複雑でテクニカルなフレーズを組み立てていく。繰り返し再生されるループ音に合わせて、ヘッドセット越しに軽く音を出し、ノリを確認する。


ドラムはタイトに、キックは心臓の鼓動を早めるように。

ハイハットは粒立ちよく、疾走感をさらに前へ押し出す。

打ち込んだ瞬間、リズムが鮮やかに立ち上がり、上がるはずのない部屋の空気が熱を帯びていくのを感じた。


サビのメロディは一気に流れ出た。

明るく、前向きで、口ずさむだけで気分が浮き立つフレーズ。

短く区切ったメロディを繋げるたびに、自然とポジティブな色彩を帯びていく。


――形になってきた。


俺は黙ったまま画面を見つめ、何度も再生と修正を繰り返す。

PCから、ヘッドセットから響くループ音を自分の中で最適化していく。


ある程度の形が整ったところで、主人公はベッドに潜り込む。ずれたヘッドセットに手を伸ばして位置を直し、付属のマイク引っ張り出す。

静まり返った部屋の中、布団のこもった空気と自分の呼吸音が耳に近すぎて、不思議と心臓の鼓動までもが響いてくるようだった。

まずはメインボーカル。

布団の中で声を張り上げるわけにはいかない。

けれど、不思議と抑えめの発声でも曲の疾走感には自然と乗れた。

明るく、ポジティブで、背中を押すような響きを意識して、一本目を録り切る。


少し息を吐いてから、二度目。

ハモリの録音。

先ほどとは声色を切り替え、別人のように歌う。

柔らかさを前に押し出し、メインを包み込むように音を重ねる。


三度目はさらに歌い方を変える。

布団の中で小さく姿勢を変え、声の芯を強め、リズムをはっきりと刻むようなハモリを重ねる。

同じ自分の声でありながら、歌い分けるたびに別の人格が立ち現れるようで、ヘッドセット越しに響く音が自分のものではないようにすら思えた。

すべての録音を並べ、バランスを微調整してから再生ボタンを押す。

瞬間、三つの声が絡み合い、ひとつの曲として立体的に響き出した。

明るく駆け抜けるメロディに、複雑なベースラインがしなやかに寄り添い、キャッチーなサビがぐっと前に飛び出してくる。

重ねたハモリは彩りを増し、曲全体を押し上げるように広がってゆく。

自分の声だけで作り上げたはずなのに、耳には確かに三人で歌っているようにしか聞こえなかった。


静かに頷き、ほんの少しだけ満足の息を吐いた。


これまで通りAIイラストをいくつも生成しては消し、生成して消してを繰り返した事数回。肩を組みながら横に並んだ数人が片足を蹴り上げて笑っているカットの良い感じのものができた

タイトルは少し悩んだ末に、画面に打ち込んだのは――

《ビターソングとシュガーステップ》。

ド直球で、ひねりも全くない。前世の人が見たら二度見するだろうって思う程に安直なものにする。

いままで通り、直感でこれ以上でなそうだったしいいだろうと

今回は特に概要欄に書き込むことはしない。TwiSterのURLだけコピペしてそのまま投稿した。

YOYOtubeへのアップロードを完了させた後、TwiSterの画面を開く。

短く一言だけ【投稿しました】と呟いた


直ぐにリツイートやいいねの反応が来たが、いったんスルー

先に気になっていた事を調べておく。

流し見していたがYOYOtubeの管理画面を開いたとき、アカウントのチャンネル登録者数の表示が目に飛び込んできた。

その数約30万人。

まだ四曲しか投稿していないはずなのに、数字の伸びは自分でも理解が追いつかないほどだった。正直ちょっと引いた


画面を眺めながら、ふと「収益化」という単語を思い出す

どうせ難しい手続きがいるのだろうと半ば流すように調べてみると――拍子抜けするほどに簡単っぽい。


一応検索エンジンで具体的な内容を調べてみたが、必要登録者数と複数の動画で再生回数が一定以上あれば大丈夫らしい。条件はそのくらいで、あとは必要事項を入力し、確認のチェックをいくつか入れるだけ。あとは運営側で判断で待ちと。

拍子抜けする軽さに小さく肩をすくめながらも、迷うことなく申請申し込みのボタンを押した。










@aya_song:「えっ、これグループなの? 男性の声が何人も聴こえてきて、もう10人くらい歌ってるように感じちゃう…✨」

👍 421 👎 12


@rinrin_beat:「立て続けに4曲も新曲ってどういうこと!? しかも全部完成度高すぎて、もう本当にプロの人たちにしか思えない…!」

👍 389 👎 5


@miwa_voice:「TwiSterの投稿が『投稿しました』だけなの逆にミステリアスで気になるの。どんな人たちなのか知りたい…💭」

👍 312 👎 8


@kana_light:「同じチャンネルなのに曲ごとに全然違う声で歌ってて、何人いるのか全然分からない…! でもそこがすごく面白い💖」

👍 280 👎 4


@yui_music:「声がかっこよすぎて鳥肌立った…! 明るいのに深みもあって、何度でも聴きたくなる感じ」

👍 265 👎 0


@hono_note:「サビが耳から離れないの! 気づいたら口ずさんでるくらいキャッチーで楽しい💓」

👍 248 👎 3


@chika_day:「完成度が高すぎて無料で聴いていいのかなって不安になるレベル…! CD欲しいって本気で思っちゃった」

👍 231 👎 1


@eri_star:「TwiSterもっとおしゃべりしてほしいなぁ…。こんな素敵な曲を作ってる人たち、絶対もっと知りたいってなるよね」

👍 210 👎 6


@mari_pop:「また新しい声の人出てきたよね? 今回の曲も前の曲もそれぞれ違う人が歌ってるようにしか聴こえない…すごすぎる」

👍 197 👎 2


@nozomi_color:「疾走感あって聴いてると自然に笑顔になっちゃう! 元気もらえる曲って最高だよね🌸」

👍 182 👎 0


@aya_uta:「これってほんとに素人さんなのかな? 事務所の新しい男性グループのデビューだって言われた方がしっくりくるよね」

👍 175 👎 10









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