【第一部完結】生きた化石系配信者の戦国配信無双~我、バズるを得たり~

龍威ユウ

序章

第0話:怪奇!無人島に潜む不気味な影!

 突然、海に無人島が現れた。


 この突然極まりなく、前代未聞の事態は世間を大きく揺るがせた。


 果たして無人島にはいったいなにがあるのか――ダンジョン配信者にとってこれは絶好のネタだった。


 その中で誰よりも先んじて、その無人島の調査および配信をする少女がいた。名を、三船ユウカといった。


「え~、皆さんこんユウカ~。ナデシコプロダクション所属、十一期生の三船ユウカです! さてさて、現在私は今話題になっている無人島に向かってます~」


 優しい笑顔で、今日も画面越しにいる視聴者とのコミュニケーションを図る。



【ユウカちゃん待ってました!】

【こんユウカ~です~♪】

【今日もユウカたんはかわいいのれす(*^^*)】

【今日も配信がんばってね!】



「みんな今日も見に来てくれてありがとう~」


 暖かなコメントにユウカもにこりと笑顔を返す。


「――、というわけでこうして無事無人島についたわけですけど……なんていうか、普通?」


 人気がないことは当たり前だ。


 それを抜きにしても島全体の空気はおどろくほど穏やかだった。


 潮の香りを運ぶ微風がそっと頬を優しく撫でていき、その感触はとても心地良い。


 とてもおそろしい存在がいるようには思えない。仕事でなければバカンスにもってこいの場所だ。


 ユウカはそんなことを、ふと思った。


「う~ん、見た感じこれといって怪しいものはないけど……」と、ユウカは島全体を散策する。


 自然豊かで小動物たちがのんびりと暮らしている。正しく楽園と呼ぶに相応しい場所だけに、ユウカの足取りもつい軽やかになる。


 しばらくして「あれ?」と、ユウカは声をもらした。視線の先には洞窟がぽっかりと空いていた。


「あそこにある洞窟……なんだか怪しくない?」と、ユウカは視聴者に尋ねる。



【いかにもって感じがする】

【絶対になにかいるでしょ! ユウカちゃん気を付けて!】

【こいつは臭せぇぇぇぇぇ! やばい臭いがプンプンするぜぇぇぇぇ!】

【ゲームだったらイベント発生】



 肯定的なコメントが圧倒的に数を占める。


 もともと、配信のスタンスはこのようなダンジョンを散策することにある。


 仮にそうでなかったとしても、それはそれでいいネタにもなる。調べないわけにはいかない。


 ユウカは「それじゃあ」と、気合を入れた。ぱんっ、と小気味良い音が彼女の両頬から鳴った。


「さっそくあの洞窟を調べてみるね」と、ユウカは勇み足で洞窟へと向かった。


 入り口をくぐってすぐに、広々とした空間が広がっていた。


 そこで目にしたものにユウカは「どういうこと?」と、はて、と小首をひねる。


 無人島だと情報は事前に聞いている。だが、目前にある光景は明らかに生活の後があった。


 厳密にいえば、つい最近まで誰かが生活していた。


「え? ここ無人島だよね? それなのにどうしてこんなものが……」


 ユウカの困惑は更に続く。


 中にある物は、言葉悪くして言えばとても古臭い。


 デジタルが主流である時代に対して、紙媒体という形式はレトロとして部類される。


 更にもっといえば、墨と筆による書式など古代文明・・・・だった。


 わけがわからない。ユウカはその顔に難色を示した。


「……これは、なんだかとんでもないお宝を見つけてしまったかも。もっと奥まで調べてみるね」


 ライトを頼りに奥へと進んでいく。


 どれぐらい進んだだろう。思いのほか地下は広く、だが構造自体は単純そのものだ。


 一本道がどこまでも続いて終わりがまるで見えてこない。


(この道、本当にどこまで続いているのかしら)


 一抹の不安がユウカの脳裏によぎった――その時だ。



【ねぇ今後ろに誰かいなかった!?】



 視聴者からのコメントにユウカはハッと振り返った。


 松明を手にした若々しい青年がそこにいた。


 齢は十八ぐらいと、おそらく自分と差ほど変わらないだろう。


 身長は170cm前後ぐらいで、すらりとした体型だ。


 特徴的なのは姿格好――遥か昔の人が纏っていた、着物にとてもよく似ている。なんなら瓜二つだ。


 ライトに照らされた髪は鮮やかな緋色で、まるでごうごうと力強く燃える焔をイメージさせる。


 同様に瞳に奥に宿るきらきらとした輝きは、さながらルビーのよう。


 顔立ちも整っていて凛々しい。少なくとも、周囲にいる男性よりもずっと頼りがいがある。そんなイメージが彼にはあった。

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