第6話 終わり

ノアガがゆっくりと動き始めた。

動き始めて最初の100年ほどは順調に数を増やし、世界が始まった人工は当初の3倍ほどに増えていた。ただ、未だに他の集団との交流はほとんど見受けられない。

「ノア、どうだ?」

ゼンはそれなりの頻度で顔を出すようになった。

「見ての通り全然だね。」

一応、神徒たちは世界のバランスが大きく崩れないように個で大きな力を持つ存在がイレギュラー的に出現したら素早く処理をしてくれてはいる。お陰で、個でのパワーバランスは崩れていない。

しかし、世界が動き出してから300年が経過したが、一向に数が増えない。それどころか、ちょっとずつではあるが、減ってすらいる。

なぜ、減っているのか分からずに、じっくりと見てみると、どうやらあちらこちらで疫病が流行っているようだ。不思議なことに一切交流がない場所で同時に起こっている。なぜそのようになっているのかを確認して見ると驚くべき事実が判明した。魔法がある世界なのに魔法が使われている形跡が一切ないのだ。魔法の才のあるものは多く存在しているのにそれらが魔法を使えないというよく分からない事態に陥っている。

そして、そんな彼らを観察していると、疫病の発生源がわかった。その発生源とは狩りに出ているものたちだ。より正確にいうならば、その中でも怪我をしたものたちのようだ。どうやら彼らには魔法がないためその傷を癒すことができず、文明が発展していないため、その傷を放置することが病に繋がっているというのが理解されていないらしい。だけど、それだけではないはずだ。なぜなら、世界には魔法が使えなくても何とかなる救済措置として、どんな傷も癒やせる草や実をあちらこちらにあるのにそれらが使われる形跡すらない。

そして、あっという間に世界を起動してから500年が経過しようとしていた。文明は一切発展していない。

「おい、ノア。もうそろそろだろう。」

ゼンが私の横で言った。

「うん。」

私は小さく頷いた。

そして、世界を起動させてから506年後ついに、世界は滅んでしまった。

ただでさえ、数を減らしていた彼らは私が善意でセットした仕掛けでゼロになってしまった。その仕掛けとは大規模な噴火と地殻変動だ。今まで私が見てきた末期の世界では資源があるがすでに簡単に取れないほどに地下に埋まっていることや取れない場所にあることが多く。その結果資源不足で滅びかけていた。なので、そうならないように私は定期的に地中深くにある資源を表層部に出てくるようにするために噴火や地殻変動が起こるように仕込んだ。しかし、その噴火や地殻変動に耐えられるだけの技術や知恵がなくそのまま滅んでしまった。これにて、私の創造した世界第一号は完全に終了してしまった。

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創世神のお仕事 カエル @azumahikigaeru

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