第35話 ターフよサラバ

オークス後、神野五郎の引退式が粛々と行われた。騎手会長のヨシノリと同期の岡田、そして俺から花束を贈呈し、これまでのお手馬の紹介や、今後についてのインタビューが行われた。ゴローちゃんは調教師にならず、競馬番組のコメンテーターへの道を選んだようだ、式が終わり、俺たちは送別会を開いた。送別会と言っても規模が違う。幹事は松平成克さんで、成克さんをはじめ松平輝幸さん、原春子、トウエイ牧場の伊達牧場長、など競馬界の重鎮が名を連ねる。騎手も豪華だ。関西の岸、滝川、嵯峨、モンテーロ、関東の岡田、ヨシノリ、ベルモント、俺など主立った騎手は招待されている。調教師では萩原師、下妻師、小河原師、滝川巧師、三島誠師、松沢師など。


 面々はそれぞれゴローちゃんの功績を称え、挨拶をして回る。これだけの人数が集まるのも、神野五郎という男がいかに偉大だったかを指し示す。俺がゴローちゃんに挨拶する段になり、俺は言葉なく泣いていた。


「アキト、桜花賞のことは気にしなくていい。オークスおめでとう。次はダービーだ」


「はい」


「悩みがあったら相談に乗るから電話しておいで。それとアキトには宿題だ」


「なんすか?」


「岡ちゃん、岡田弘明と和解すること。岡田さんがこれまでどんなつらい思いでいたかわかるかい? アキトも辛かっただろうけど岡ちゃんも辛かった。それを、もう赦していいんじゃないかな」


「はい……」


「それじゃあ、ダービーを頑張るんだよ」


 ゴローちゃんは俺の肩を叩いて、抱きしめて背中を叩いてくれた

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