第3話 おばあちゃんのおうち

「着いたわよーカエデ。顔色悪いけど、大丈夫?酔っちゃった?」


 時刻は15時過ぎ。かえでくん、車での長距離移動で疲れちゃったかな?


「我は確か、魔王と相打ちになり、意識を失ったはず……なのに、目が覚めたら何故子供の姿になっている?何が起きたというんだ?」

「カエデ、水飲むか?」

「……かたじけない、いただこう」


 お水を飲んで落ち着いたみたい。と思ったら今度はペットボトルが気になるのかな?パパが潰しているのを食い入るように見つめているね。


「瓶を……片手で!?ステータスを筋力に全振りしているのか!?」

「うん?カエデの手だと、まだ片手じゃ潰せないだろ。……よっ、扉の建て付け相変わらず悪いな。母さーん。いるかー?」

「お母さーん、こんにちはー。お久しぶりですー。今着きましたー」


 ガラガラ鳴る扉を開けて。おばあちゃんのお家に到着!おばあちゃんはいるかな〜?


「あらあら早かったわねぇ。お帰りなさいレイジ、ランさん。そしてカエデ。元気そうで何よりだわ〜」


 かえでくん、1年ぶりのおばあちゃんとの再会!


「……」

「カエデ?どうしたの、まだ体調悪い?」

「……」

「ごめん母さん、何かカエデ酔ったみたいで──」

「…………おばあちゃん。おばあちゃん、おばあちゃん!」


 おばあちゃんに抱きついた!感動の瞬間だー!かえでくん、やっぱりおばあちゃんが大好きなんだね!


「おばあちゃんだ……ヨツギおばあちゃん……!故郷にたった一人置いてきた、俺の、唯一の──!」

「あらあら、泣いてるの?どうしたのかしら。お熱があるの?」


 泣いちゃった。おばあちゃん困ってるぞー。


「うーん、熱はないみたいね〜。お腹痛い?」

「痛くない……」

「じゃあ〜もしかして、お腹空いた?」

「…………少し」

「冷えたスイカならあるけど、食べる?」


 なーんだお腹空いてたんだね。でもこの時間に食べて大丈夫?


「すいか?知らない料理だが……おばあちゃんがくれるなら食べる……」

「こらカエデ、こんな時間に食べたら夜ご飯入んなくなるわよ?お母さんもあんまりカエデを甘やかさないでください」

「まあまあ、ちょっとくらいならいいんじゃない?俺も食べたいし」

「パパ!も〜」

「じゃあスイカ切って来るわね。ランさんも運転疲れたでしょう?居間で休んでて〜」


 居間に移動して、座布団に座る花茶屋はなじゃや親子。泣き止まないかえでくん。


「カエデ〜もしかしてスイカ食べたいからって、おばあちゃんに甘えたのか?やっぱりお前は演技派だな〜」

「グスッ……甘えたいに決まってるだろ……おばあちゃん大好きなんだからな……グスッ」

「2人ともスイカは1切れだけにしなさいよ?カエデは鼻噛む。ほらチーン」


 顔が涙と鼻水でベシャベシャだ。おばあちゃんと会えたのがそんなに嬉しかったんだね!


「うん……うん。これはきっと夢なのだろう。顔も思い出せないくらい小さい時に魔王に殺された両親と、そんな俺を愛情込めて育ててくれたおばあちゃん。魔王なんて存在しない平和な故郷で、みんなと暮らすことの出来た世界。……なんて幸せな夢」

「やっぱりカエデはキャラメイクから凝るタイプだよな。ママに似て」

「それはパパが無頓着すぎるだけですー。普通の人はキャラメイク出来るゲームの自キャラはこだわるモノですー」


 ママとパパがまーたイチャイチャしてる。オンラインゲームで出会って、付き合い始めた頃からこんな感じらしいですよ?


「みんな〜スイカ持ってきたわよ〜。食べて〜」

「おー今年も美味そうだな。ほら、カエデ。どれがいい?」

「これは……縞赤玉ボーダーフルーツに似ているが、違うのか?……コレを頂こう」


 かえでくん、久々のおばあちゃん家のスイカ。お味は?


「モグッ……んんん!?ん、ん、甘い!?…… 縞赤玉ボーダーフルーツとは全然違う!甘い!甘くて瑞々しくて美味しい!こんなに水分のある果物、初めて食べた……!美味しい……!」

「カエデ、あんまりガッつかないの。汚いでしょ」

「もしかしたら軽い脱水状態だったのかもな。パパ麦茶持ってくるよ」

「モグモグモグモグモグ」


 凄いスピードでスイカを食べてる!ちゃんと種は吐き出して!


「カエデは相変わらずスイカが大好きでおばあちゃんは嬉しいよ。夜ご飯の後も食べるかい?」

「モグふぁべる!モグモグモグ」

「もー間食が多いとパパみたいにプクプクになっちゃうわよ?」

「でもそんな俺も好きだろ?」

「もー!やだっ、パパったら。んもー!」


 オシドリ夫婦なレイジ/ラン夫妻。毎年1回、5日間2人きりで長期旅行してるんだって。ラブラブー!


「ふふ、おばあちゃん。夜もカエデ達に喜んで貰えるようお寿司を注文したわ。楽しみにしててね」

「おふゅひ?んぐっ。おばあちゃんと一緒に食べる食事なら俺は何でも美味しいよ」

「……ありがとうカエデ。おばあちゃんはね、カエデの笑顔が見れるだけで後30年は長生き出来るわ」

「30年と言わず、80年でも100年先でも元気でいてよ」

「うふふ。そのためにはカエデが元気でいてくれなきゃね?」


 おばあちゃんがかえでくんの頭を撫でる。かえでくん、すっごい嬉しそう!


「ところで、カエデは小学生になったんだってね。もう6歳か〜少し前まではそこでハイハイしてた子がね〜。小学校はどうだい?お友達は出来たかい?」

「んぐもぐ。ショウガッコウ?……友達……いるんじゃないか。多分?」

「あーコラ、カエデ!スイカ1切れって言ったでしょ!何2切れ食べてるの!」

「そうだぞカエデずるい!パパも食べる!」

「パパー!親が見本にならなくてどうするのよー!」


 おやつの時間は楽しく過ぎていきました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る