003 これは奇跡なのか?

 気を失ったのか、単に寝たのかよく分からない不明の時間の後、エアは何だか騒がしくて目が覚めた。

 重傷者や重体者が運ばれて来たにしては、何だか声が明るい。


「やったーっ!」

「神様ありがとう!」

「奇跡だっ!奇跡が起きて治ったぞ!」


 遠くからそんな風に喜ぶ声や歓声が聞こえて来た。

 うっすら明るいのでもうすぐ日が昇る時間なのだろう。

 エアは気になってそっとベッドから降り、病室から出て廊下を見てみると、魔石ランプや蝋燭の灯りがちらちら見える。


「何があったんだ?」


 エアは足早にどこかに行こうとする男の看護人に訊いてみた。


「ああ、いきなり回復してたんだよ。重体、重傷患者たちが何人も」


「…はぁ?何で?」


「それが分からないから、どのぐらいの人たちが回復しているのかと見に行く途中なんだ。君は…残念だったな」


 少し血が滲んだ包帯を巻いた左手首を見られる。


「今更?」


「欠損も治ってるんだよ。新しい手や足が生えた?のか、生身そっくりの何らかのマジックアイテムなのか分からないけど」


「…嘘っ?それって伝説の霊薬…」


「かもしれない。じゃ、順番に見て行くから病室に戻ってて。まだ顔色が悪いよ」


「ああ…」


 重傷重体患者がいる病室辺りは少し遠い。

 今の体力のなさでは、病室に戻るしかなかった。


 四肢欠損が治った?どうして?


 …ああ、分からないから、奇跡なのか。

 重傷重体患者が治った。二十人前後いたハズだが、すべてだろうか?


 手の施しようがなく衰弱していた人の家族が嘆き、医者や回復術師ヒーラーに懇願していたが、その人も?

 伝説の霊薬は怪我や病気は治しても、極度に衰弱している人まで治せるのか?


 ポーションは衰弱していれば効き目はほとんどない。

 身体の持つ「治る力」に働きかけて治すのがポーションだから、身体自体が衰弱していれば治る力も落ちる、と聞いたし、実際、治らなかった人も目にしたことがある。

 伝説の霊薬でもそこは同じではないだろうか。



 それにしても、左手が欠損しているエアは何故、除外になったのだろう?

 四肢欠損を治してくれるのなら、自分も治してくれてもいいのに。

 一応、峠は越えているが、体力を消耗し、血が足りてないので、もし、今、他の病気にかかったらまた生死の境をさまようことになるだろう。


 重傷重体患者から順番に、ということだろうか?

 ここにいれば、治してもらえるのか?

 無料で?無料じゃないのなら、一生かけても支払うから治して欲しい。

 伝説の霊薬に値段なんて付けられないだろうから、孫の代まで借金返済しないとならないかもしれないが、なるべく迷惑をかけないようにするから。


 いや、そもそも、治したのは人間なのか?

 精霊や妖精は気まぐれだし、見ることが出来る人も少ないが、独自の魔法や薬があると聞く。気まぐれで治した、のか?


 そんなことをエアがぐるぐる考えているうちに、どんどん騒ぎが大きくなり、病院中の入院患者が何があったのか知ることになった。


 昏睡している患者が一人もいなくなった、と。


 瀕死だった人も、何故か治っていたらしい。

 体力はそこそこしか戻っていないので、しばらく療養は必要だろうが、驚くべき回復だ。

 四肢欠損、失明、神経断裂、複雑骨折、深手の怪我といった一時期は生死をさまよったが、今は少し回復しているエアのような患者たちも治ってる人も数人いた。


 そう、数人だ。

 死にそうな人から治して行った、という感じだった。




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new「番外編46 療養は仕事 ―434話NGテイク―」

https://kakuyomu.jp/works/16817330656939142104/episodes/16818093076649978391

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