第16話

 夏になるとあの川はかなりの水位になるんだ。

 不思議と何故かはわからない。


「あ、人?! かな……」

 鈴木が言葉を零したが、急にこちらへ向いた。

「あ、違うようですね。人かと思ったんですが、きっと、人形のようなものですよ。ほら、浮いていますし」


 俺と日台が川の下流へと流されていく物体を目で追った。


 確かに浮いている。


「なあ、でもつい最近に事故った感じだよな。あの車……」

 日台が小首を傾げて、下流を見ていると、俺はその物体が時々こちらに向かって手を振っているようにも思えた。


「うーん。こりゃ、怖いなあ……まあ、人じゃないなら次行こ。次。お祈りしていこうよ」


 日台が神社へと向かおうとした。

 

「お願い助けてーーーーー!!」


 と、突然。人の叫び声が人形のような物体だと思っていたものから聞こえた。


 俺は咄嗟に川へと飛び込んでいた。


 無我夢中で水かさが増す川を泳いだ。

 日台と鈴木が何か喚き散らしているようだが、俺の耳には水以外は入らなかった。


 バシャ、バシャと思いっきり泳いでいると、何故か酷い悪寒がしてきた。最初は冷たい川の水のせいかと思っていたが、どうも胸騒ぎまでしてくる。それも叫び声が聞こえてきたところからだ。


 慌てて、俺は叫び声がしたところから向きを変えた。


 あの物体は一体……?

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