第51話 退魔
#1
”厩舎を解放します”
ダンジョン多分最下層、管制室。
オペレーターが掌をガラス版の上にかざすと演算器が応答して厩舎の扉が開いた。
無防備な管制室を制圧した。
無条件降伏したオペレーターを持って居た手錠で逮捕する。
「いいんだっけ?」
「いいんだよ」
深理は演算器に自分の携帯端末を接続してデータをスクロールしている。
オペレータの前、モニターに厩舎から解放された女性達が映っている。二十前後、黒音と大体同じ年齢の娘が大半だが、中には十代前半に見える娘も居た。何故かは知らないが、簡素だが皆服は着ていた。
「はい、みなさん上に向かって」
上には客用の擬装出入り口しかないが、データを見る限り他に此のダンジョンに出入り口はなかった。
食い入るようモニターを見ていたが。
羽夢は出てこなかった。
#2 トンネルの先最下層
”遅かったなーー”
********
「蜘蛛、だったな」
「十年待ったよ、カド」
蜘蛛が銃口をカドにポイントした。
「辞めておけ」
「今更ーー憶えているか?」
「忘れていたよ。お前の顔を見るまでは」
「ーー」
「追う相手を間違うとーー」
#3
最下層の下から延びた通路を抜けてハッチを開けると男が一人倒れていた。其の先を見るとーー
倒れた男に止めを刺そうとする男の背に。
「日乃君?」
間違いない。
「羽夢さん」
―—やっと逢えた。
「金を掛けても、無駄は無駄だな」
羽夢さんの目は此方を見ていた。
「羽夢さん無事?」
羽夢さんは目を細めてニッコリ笑った。
「生憎だが愁嘆場を演じさせてる時間はない」
羽夢さんが男を鬼っと睨んだ。
「日乃君――」
「どうするんだ?」
倒れた男に向いていた銃口が此方に向けられた。
38口径の火薬式自動拳銃。
距離――。
「!」
羽夢さんに向かって走り出す。
二秒。
一秒目で発射された拳銃の弾が脇を抜ける。
二秒目。
男に体当たりして、突き倒す。
マウントして銃を奪う。
寸前に顔を殴られて体制が崩れる。
手に取った拳銃が床を転がる。
崩れた体制から男が抜け出し、拳銃を拾いに掛かる。
拳銃を回収される。
再び銃口をポイントされ―—
「!」
驚愕する男。
拳銃を落とし右腕を抑える男。
拳銃を手に立ち上がる。
「動くな」
「日乃君!」
「え?」
振動が全身を震わせ爆発音が遠く頭上で響いた。
男は拳銃を左手に持ち替えて立ち上がる。
羽夢さんを引き寄せ。
「――どうする?」
銃持って対峙する。
「日乃!」
振り返りそうになったが男から目をそらせない。
#4
しようがない。
羽夢さんは目を細めてニッコリ笑った。
消された。
男に詰め寄って銃を奪ったシークエンス全部。
出来るかもう一度。
「生憎だが愁嘆場を演じさせてる時間はない」
羽夢さんが男を鬼っと睨んだ。
「日乃君――」
「どうするんだ?ーー
耳鳴りがする気がした。
ーー男が耳を塞ぐ。
「ーー悪魔憑き」
深理さん?
前に出た深理が耳を塞いでうずくまった男の落とした銃を拾おうとする。
「動くな」
「日乃君!」
「え?」
振動が全身を震わせ爆発音が遠く頭上で響いた。
男は拳銃を左手に持ち替えて立ち上がる。
羽夢さんを引き寄せ。
「――どうする?」
銃持って対峙する。
「日乃!」
「厄介な」
深理は手にした発振器の出力をあげた。
一瞬物凄い耳鳴りがした、
男の身体から黒い霧のようなものが湧いて出る。
襲って来るか思ったら、皆奥へと去っていった。
#5
失神したらしい男の脇に居る羽夢さん。
近くによって肩に手を掛けた。
緊張したのか冷たかった。
離ればなれだった。
努力はした
殆ど空回りだった
敵は、深理さんが倒した。
「すみません何も出来てなくて」
「........もう少し凛々しく」
この場合凛々しくって何だ?
「”もう、大丈夫”。で、どう?」
羽夢さんは、泣き笑いして言った。
「及第点とす」
「ありがとうございます」
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