10話

「麻世ちゃー――きゃ!?」

「っと、大丈夫か?」

「あ、ありがとう、うーん……やっぱりもっと運動をした方がいいのかな?」


 だが、本当になにもないところでこうなり始めると心配ではある。


「したいなら付き合うぞ」

「で、でも、今日はいいかな」

「そうか、だけどしたくなったら言えよ?」


 どこかに出かけるというわけではないから家の中に入ってもらう。


「史くんは二階にいるの?」


 やたらと朝早い時間から出ていったからなんとなく昼前ぐらいには帰ってくるのではないかと考えている。

 まあ、帰ってきたところで普通のことだし、なにか変なことをするというわけではないからそこでも長くてもいい。

 ただ、遅い時間になることだけは避けてほしかった、流石に友達と過ごせて楽しいとしても二十時とかはやめてもらいたい。


「今日は遊びにいっているんだ」

「ご両親もいないんだよね?」

「ああ、休みはランダムだから決まっているわけじゃないけどそうだな」

「じゃあやっと本当の意味で二人きり、なんだね」


 史が高校で新しい友達を作ったことと、この前も言ったように円にも友達ができてほとんどそうだったことはスルーか。


「あ、お菓子を買ってきたんだ、だから食べよう」

「ならジュースを注いでくるか」


 やっぱり菓子にはそういうのが欲しい、麦茶とか水でも美味しいが場面によっては勝てないのだ。


「うぇ、こ、これでいいよ、お菓子にジュースにってやばいじゃん……?」

「はは、気にするな、一日に一回程度な――莉生、もしかしてもう食べたのか?」

「た、食べてない食べてないっ、寝られていないからって甘い物に頼ったりしていないからっ」


 それでも食べたければ食べればいいのだ。

 買ってきたのは莉生だし、仮にこちらが出していたとしても彼女に食べてもらいたくて出しているだけ、気にする必要なんかなにもない。

 気になるということなら食べた後に運動をすればいいのだ、あたしだってなんにも気にならないというわけではないから悪くない時間になる。


「莉生」

「麻世ちゃんに言われても――な、なんでここで抱きしめるの!?」

「大丈夫だ」

「うぅ……麻世ちゃんと欲に負けちゃうよ……」


 負けたっていいさ、生きているだけでなんらかのことを頑張っているのだから。

 人間は定期的にご褒美が必要になるのだ、だからなにもおかしなことではない。


「……こうなったらお菓子よりも続けてほしいな」

「あ、これはもう終わりだぞ」

「ええ!? じゃあお菓子を食べるっ、ジュースを飲むっ!」


 よかった、変に我慢をしたりしないで。

 それっぽいことはこれからもできるのだからいまは目の前の菓子に集中してもらいたかった。

 だって意識を向けられたら恥ずかしくてどうしようもなくなるからなぁ……。

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155 Nora_ @rianora_

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