第11話 Episode0Ⅰ
話は少し遡る。医療施設にクロウデェンが訪問した3日後の事だ
「決意は決まったようですね。ソラさん」
「あぁ、僕は入学する。卒業した上であんたを殺す」
再び訪れたクロウデェンに、僕は入学する旨を伝える
「聞きたい事があれば何でも仰ってください。そういう約束でしたので」
入学する対価として出されたのは、この都市の情報を提供するというもの
殺した先の事を考えでも仕方がないと思っていたが、僕達のようなものが二度と現れないためにも彼女を利用してでも見極める価値はありそうだ
「まずは塔に居た牛について教えてもらいたい」
「あれは人です。正確には、なり欠け人になれなかった者の事です」
「あれが…人?そんなはずが」
骨格からして違う動物のように見えたあの牛が何故赤子のそばに居たのか…
あそこに居たもの達の中の欠陥品が彼らであるとするなら辻褄が合う
「僕達はあそこで生まれたということ?」
「はい。一部例外はありますが、塔の内部の貴方達を含めた全ての子供達はあそこで産まれたのです」
「何も無い所から生命が生まれるなんて…そんな事」
「はい、そんな事は有り得ません。あくまで貴方達は、塔という母胎から産まれたものです」
意味が分からない…まるで塔が母親で、生きている人。とでも言うのか
馬鹿げている、、とても現実とは思えないものだった
「じゃあ、塔が何とも交配せずに勝手に僕らを産んでいるという事?分裂するかのように」
「いえ、それは違います。塔は外部から生物を取り込みそこから新たに生み出しているのです…人の形に変えて」
「生物って、、僕らは生き物を画面越しで見たことしかない…別の生き物を見るのはあの牛が初めてなんだ。それがどうして塔に吸収されるんだ」
「児院全土の土地は、その下に空洞の地下があります。厳密には児院の場所が上で地下が地上になるのですが、それはさておき塔は地上つまり下から獲物を吸収し交配をしているわけです」
僕らが地に足を付けていると思ってる場所の下に本当の世界が広がっている
今までの生活はなんだったのか…僕らが信じていた常識が崩れていく
「取り込んだ生物と塔のキメラ…とても人なんてものじゃない」
「えぇ、人間が手をかけて作った機械であるハイソリティらAIの方が余っ程人に近いものなのかもしれません。ですが…」
何かを話そうとしたがクロウデェンが思いとどまる
「まだ何か隠していることが?」
「いえ、不確定な情報ですので真に受けず聞いていただいて構いません。塔の地下中枢には旧文明の人類がコアの役割を担っている。という噂を聞いたことがあります」
「旧文明の人が生きている??この時代に生きているものは居ないはずじゃ」
「仮死状態のようなものらしいので生きていると言っていいのかは分かりませんが…生物を吸収して新たに生み出せるのはそのおかげなのかと」
「そんなこと許されていいはずが…仮死状態の人を生贄みたいにして」
「あくまで噂です。仮に本当だとしても、XX戦争時の副産物ですので仕方がないです…彼らが潰した倫理や道徳を我々の道理に当てはめる必要はありません」
「何が道理だ…試験という名の人殺しをさせておいて、、結局僕達が殺したのは動物なんかじゃなくて人間だったって事じゃないか…」
「えぇまぁそうなりますね」
腐っている…もしここで真実を明かされていなければ決してミノタウロスに同情などしなかったであろう。知っていれば仲間内で殺し合う事を良しとしないからとは言え隠してまで試験を続行させる事を都市が許したということなのか
「今回行われていた試験は私の判断ではありますが、独断で行った訳では無いのであくまで都市の総意であることはお伝えてしておきます」
都市本体が僕達に殺し合うことを許容した。という事実を強調するかのようにクロウデェンは話す。
「あんたは僕を飼い慣らそうとしてるのだろうけど、、どんな事実があったとしても最終的に殺される事だけは覚えておいてください」
「ふふっ…殺意を押し殺すのが必死そうね。貴方に殺されることは別に構いませんよ。それもあくまでシナリオのうちですから」
つくずく人をイラつかせてる事にたけている
「まだ知りたいことがあるとは思いますが…今日はこのくらいで帰ります」
「あぁ、そうしてくれるとありがたい」
クロウデェンが病室を出る
聞きたいことがなかった訳ではないが今は少し頭を冷やしたい…
塔には人を利用する事を何とも思わない人間が彼女以外にも、この都市には蔓延っている考えるだけで吐き気がする。だけどその事実だけで僕の覚悟を決めるには充分だった
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