ルール

「さぁ、説明に戻りますよー。ゲーム内容は実にシンプル!」


 モニターに『壊れるボタン』とイベントのタイトルらしきものが映された。


 病院の会計に設置された画面とは、不釣り合いに思えるポップ体のフォントの組み合わせ。


 なんとも言えない微妙さ……である。


「施設内にはいたるところに特別なボタンが隠してあります」


 ……?


「ボタンを押した参加者は、賞金が獲得できます」


 ……!?


「ボタンには種類があります、青と赤の……賞金額は……」


 わざとらしく間を取る美田……、


「青が1000万円、赤が1億円です!!」


 ……!!!?


 その場にいる参加者は、全員ポカンとしていた。


「ここで皆さん、首筋に手を当ててみてください」


 その言葉に多くの参加者が従った。

(おそらく首にちょっとした違和感をあったのだろう)。


 そして、自分の首筋に異物が埋め込まれていることを認識した。



「そうです!ここに入ったときに一度、失神してもらい、機械を埋め込ませて頂きました」


 参加者たちがどよめき出した。言葉の意味を理解できない者や、機械を埋め込んだことに怒りを覚えた者等、様々な、どよめきだった。


「落ち着いて!落ち着いて!もう、人力では取り出せませんから!落ち着いて!」


「この機械、優れものでしてね、脳神経にズバッ!と命令を送れるんです!」


 パッ


「モニターをご覧ください!この様に青いボタンには数字が刻印されています」


「ボタンを押すと、同じ数字の参加者の…………心が壊れます」


 心が壊れる?


「イメージとしては、あれですね、ゾンビ!」


 うーーーうーーー。


 ……と、手を前に出し、うごめいて、ゾンビのマネをする美田。


「心が壊れた人間は、周りにいる人間を襲います!頑張って抵抗するなり逃げるなりしないと」


 ぱぁ!


 ……と、変顔をしてみせてから、


「殺されちゃいますよーーあはは、そんなことは、あ・た・り・ま・えかぁーー」


 おどけて説明を続けるが、当然、誰一人、笑っていない。


「簡単に殺されちゃうのは、流石にかわいそうなので、ちゃんとアイテムを隠してありますから、探してみてね」


「…………」

 驚き、動揺、混乱、参加者それぞれの感情はバラバラだったが、誰もが言葉を失っていた。

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