【カクヨムコン10短編】雨が降る。 ~私が見つけられないこと~
マクスウェルの仔猫
第1話 雨が降る。
雨が降る。
湿っていく空気、ほんのりと薫る雨の中で、傘を手に歩く人、人、人。
誰かの気持ち。
誰かの予定。
雨の日には雨の日の、装いがある。
●
きらびやかな店先。
人待ち顔の誰か。
雨宿りをする、誰か。
それぞれの予定を胸に一人、傘を差して歩く人達。
肩を寄せ合って笑い合う男女、家族。
雨の日には雨の日の、愛情がある。
●
雨は、キライじゃない。
けれど。
雨の匂いと温かさが詰まっている街の中で。
店先で、交差点で、駅で、帰り道で、部屋で。
私には、見つけられないものがある。
●
「お待たせ。あー、こんなに濡れちゃって……」
「俺の傘で相合い傘しようか」
「手を繋ぎたいって、聞く事? はいどうぞ」
「夕飯食べたら部屋で膝枕、だめ?え、有料?!」
君がいたら、こんな風がいいな。
そんな自分に呆れてしまう。
●
息を切らせて、傘を差し出す君。
温もりを感じられる程、肩を寄せてくれる君。
差し出した手を嬉しそうに繋いでくれる、君。
●
どんなに勉強を頑張っても。
どんなにオシャレをしても。
どんなに気持ちを伝えても。
どんなに涙を零しても。
●
私に笑顔を向けてくれる君を
私を好きになってくれる君を
今も
見つけられない
【カクヨムコン10短編】雨が降る。 ~私が見つけられないこと~ マクスウェルの仔猫 @majikaru1124
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