【カクヨムコン10短編】雨が降る。 ~私が見つけられないこと~

マクスウェルの仔猫

第1話 雨が降る。

 雨が降る。


 湿っていく空気、ほんのりと薫る雨の中で、傘を手に歩く人、人、人。


 誰かの気持ち。

 誰かの予定。


 雨の日には雨の日の、装いがある。



 きらびやかな店先。


 人待ち顔の誰か。

 雨宿りをする、誰か。


 それぞれの予定を胸に一人、傘を差して歩く人達。

 肩を寄せ合って笑い合う男女、家族。


 雨の日には雨の日の、愛情がある。



 雨は、キライじゃない。


 けれど。


 雨の匂いと温かさが詰まっている街の中で。

 店先で、交差点で、駅で、帰り道で、部屋で。


 私には、見つけられないものがある。



「お待たせ。あー、こんなに濡れちゃって……」


「俺の傘で相合い傘しようか」


「手を繋ぎたいって、聞く事? はいどうぞ」


「夕飯食べたら部屋で膝枕、だめ?え、有料?!」


 君がいたら、こんな風がいいな。

 そんな自分に呆れてしまう。



 息を切らせて、傘を差し出す君。

 温もりを感じられる程、肩を寄せてくれる君。

 差し出した手を嬉しそうに繋いでくれる、君。



 どんなに勉強を頑張っても。

 どんなにオシャレをしても。

 どんなに気持ちを伝えても。


 どんなに涙を零しても。










 

 私に笑顔を向けてくれる君を


 私を好きになってくれる君を
















 今も

















 見つけられない




















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