第4話 謎のバズり


 高校の教室で、入学してから一年が経つが、ここまで注目を浴びたことはない。


 モテ期が来た……? などと内心でふざけていたが、少し視線が異質で怖かった。


 はぁ、今日はスマホも壊れるし最悪だな……。


「えっ、スマホが壊れた?」

「うん。ほら、通知が止まらないんだよ」

「……マジか、コイツ」


 後ろの席の神崎に、俺はスマホを渡す。

 昨日の夜辺りから、ずっとブーブーうるさくて困っている。


 変なウイルスでも入ったのか、と怖くて布団を被って怯えていた。お陰で良く寝れた。


「下手に触ったら壊れそうで怖くてさ」


 でも、これでは配信できないし、青鳥も開けない。


 そこで後ろの席の神崎さんに相談することにしたのだ。とあるIT企業のご令嬢で、機械修理は得意なはずだ。


 透き通る顔立ちで、顔を合せると白銀の髪と瞳が目に入る。

 

「神崎なら詳しいかなって。ITって、機械修理もできるんでしょ?」

「IT企業の娘だからってなんでもできると思うなよ……一応現代っ子だよな、ソラ」


 中身は平安で止まってます。一応現代の知識はあるが、やはりカルチャーショックは受ける。


「本当にネット見てないの? 一回も?」

「うん」

 

 ネットで何かあったのかな?

 俺のスマホを慣れた手つきで操作する神崎が、俺に青鳥の画面を見せる。


「通知がうるさい原因これ」

「おぉ、ありが……ふぁ、ふぁぁぁぁっ!?」


 教室で一人、叫んでしまう。

 俺の反応をみて、神崎がニヤニヤと笑う。


 スマホの画面には確かに青鳥こと、つぷっちーのフォロワー【50万人】の文字が書いてあった。

 通知も9999+で停止している。


 な、何事!?


「あとトレンドも一位」

「なんで!?」

「本当に知らなかったのかソラ……逆にすごいな」


 トレンドも一位……二位は大神リカだ。

 

「有名なインフルエンサーが記事をまとめていたぞ。その影響でさらにバズりにバズッた」


 その記事というものはこういうものだ。


 大物配信者大神リカが下層に初挑戦するも、イレギュラーに遭遇。

 偶然通りかかった無名配信者が助ける。その配信がバズり、トレンド1位入り。


 無名配信者

 陰陽師を名乗る上野ソラ 


「本名まで晒されてる……」

「ちなみにこの高校もだ」

「嫌ぁぁぁっ! それはやり過ぎじゃない!?」


 俺の反応が面白いようで、次々にとんでもない情報を取り出してくる。

 それぞれの反応だったり、他の大物ダンジョン配信者が触れていたり……。


 何がどういうことなのか理解するのに、時間が掛かった。

 

「でも、肝心の大神リカはだんまりか。青鳥も更新してないし、配信もまだやってない」


 あぁ、助けたあの子か……。


「昨日、あんな目に遭ったんだ。当然だと思うよ」


 もしかしたら、あれがきっかけてダンジョン配信者をやめるかもしれない。

 死を間近にして、心が一度でも折れてしまえば潜ることはもうできないだろう。

 それは陰陽師でも同じだ。妖怪や悪鬼との戦いで心が折れた者から辞めていった。

 

 いつの時代でも、そういうところは不変だ。


「次の配信は、何をするか決めたのか?」

「普通のダンジョン配信しようと思ってるけど……まずは、この状況を説明する配信した方が良いかなって」


 俺は腕を組む。

 現状を確認する意味合いで配信した方が良いとは思う。


 となると、自宅で雑談配信みたいなものだろうか。


 ただ雑談するだけだとつまらなくない……? たぶん、つまらないよな。


「前に言ってた方向性は変える話だけど、私は今のままで良いと思う。お前は素が面白い」

「……素か」

 

 俺の素を晒して、受けて入れてもらえるか自信はない。

 この学校に居る人たちにも、素を見せてもドン引きされることが多々ある。


 この後ろの席の神崎は、なぜか面白がってくれるけど……。


 うーん、神崎を信じて見よう。


「分かった。ありがとう、神崎」


 人が増えなくても方向性は変えない。

 

 バズった……凄いことだけど、なんか怖いな……。

 こう、現実味がなくて。


「気にするな。頑張れよ、現代最後の陰陽師」


 よし、頑張るぞ! 俺!



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