通勤時間5.0h

T-たっくん

第1話 私の通勤時間

「そろそろ2時間になります。休憩しませんか?」


カーナビから毎日お決まりの言葉を投げかけられながら、都会の喧騒を抜け、たまに瀬戸内海も抜ける。

海に反射する光に少し憂鬱を覚えながら、私が勤務する場所には、片道2時間半かかる。

トラックとトラックの間に挟まれ、変わりない遮音壁に挟まれた風景の中、いろいろな思考を巡らせ勤務地に着いた頃には、一仕事終えたような充実感すら感じる。


私は、社内異動プログラムに応募しました。

正直思うほど理想的な展開にはならなかったのですが、「あの頃」に比べると、まあまあうまくいっていると思っています。

いや、そう思いたいのかもしれません。

思っておきたいのかもしれません。今は・・・

私は、前のチームが嫌で逃げました。

逃げるために、ただがむしゃらに社内異動プログラムに応募し、少し強引にことを進めていきました。必死に逃げようとする中年男性は、悲壮感の様なものをまき散らし、まわりからは、いくらかは哀れにすら見えていたでしょう。逃げた結果が現在の通勤時間 5.0hです。責任はすべて自分にあり、まさに自爆という言葉が刺さる状態とはまさにこのことです。


今の勤務は、大阪に住みながら岡山や香川県の営業担当。

中国道を抜け、山陽自動車道や、明石海峡大橋、瀬戸大橋を渡り仕事をする毎日。高速道路は、「大型車が多いなー」と日本を支えて頂いている物流に感謝の気持ちを思いながら、Audibleを聞きつつ、2.5hほどかけて勤務地や客先へ向う。

急ぎの案件の連絡が入ると、PAなどに車を止め車内で仕事。

暑い季節は、体もPCも不調をきたすので、カーエアコンを効かせてアイドリングで仕事。

PCの電池が切れると、何も出来なくなってしまう。まるで、会社のインフラから切り離された孤独感のある仕事。

もう、巷のSDGsに逆らうかの様に、環境にすら配慮する余裕もない働き方を手に入れた私は、「果たして持続可能なのか?」と、罪悪感を感じながら、キーボードとハンドルを行き来しながら、1日の大半を車内で過ごす。

日差しが強くなる頃、両腕の色は少なからず違うトーンになり、例えるならばそれはまるで新しい令和の窓際族のようだ。










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