第24話 下水前の攻防

 「早く!ここから下に降りて避難するのよ!」

 魔族の攻勢が激しさを増していた。

 下町を越え、教会が立ち並ぶ地区に緑色の巨人をぶら下げた飛竜が飛んでいくのが見えた。

 それよりも手前、先程までフレデリックたちが騒いでいた繁華街にも数体の巨人が落ちている。

 お父さん《フレデリック》の言う通り、すぐに避難誘導していて正解だった……

 あそこに残って魔族と戦っていたら――チェスカは背中に冷たい汗を感じた。


 チェスカは繁華街からは南に少し下ったところにある下水道への入口で住民の避難を指揮している。

 途中で出会った衛兵数名を指揮下に入れ、多くの住人を下水道へと送っていた。

 時折、散発的に魔族が襲っては来たが、いずれも大した敵ではなかった。

 だが、状況は刻々と変わってきている。


 緑の巨人――ギガンテスが街に侵入してくるのと同じくして、降下猟兵が波状攻撃を仕掛けて来ている。

 彼らは魔物とは違い、知性を持っていた。

 チェスカ達が下水の入り口という拠点を守っていること、また、そこに人間が逃げ込んで行くことを発見すると、攻略目標として狙われることとなった。

 チェスカは非武装の住民を守りながら、それらに対処する必要に迫られていた。


 「このっ、しつこいってば!」

 降下猟兵の剣撃を受け止め、押し返す。鋭く入れた突きが敵の急所を貫き、やがて物言わぬ骸となる。

 チェスカは決して弱くない――が、住人を守りながら拠点を防衛しているために、消耗していた。

 「た、大尉殿、敵が多すぎます……」

 指揮下に組み入れた衛兵たちが弱音を吐いている。

 すでに人数が半分以下に減っていた。降下猟兵が出現してから、もう何人もやられている。

 衛兵たちはリーチのある槍で敵を牽制するのが精一杯だ。

 「弱音を吐かないで!私達がやられたら、中に逃げ込んだ人たちが危ないのよっ」

 また襲ってきた降下猟兵に鋭い突きを入れる――が、鎧に弾かれ、刀身がたわんで真っ二つに折れてしまった。

 「なんでっ!?」

 降下猟兵の一撃を折れた剣で受け止める。その勢いにつまづき、後ろにぺたんと尻餅をついてしまった。

 今が好機と、敵は剣を振りかぶる。


 ――殺られる……そう思った時、ふっとあいつの顔が浮かんだ。

 ホーク……ホークは無事だろうか。ごめん、私、ここまでみたい……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る