第12話 異世界転生!?
一週間前に自分の身に起きた出来事を振り返る。
下校中のことだった。高校のすぐ近くの交差点――
黄色に信号がチカチカと光っている――
不意に、眼の前を交差点にふらふらと出ていく女の子――
見上げると歩道橋の欄干から子猫がぶら下がっている――
「危ないわよ!」
ランドセルの吊手を掴んで女の子を歩道に戻すと、アタシは駆け出していった。
小さかった頃、子猫を助けられなかったことがある。もう後悔はしたくなかった。
耐えきれなくなった子猫が下に落ちてくる。私はそれを胸元でキャッチした。
「よかったぁ……」
みゃぁ、と短く子猫が泣くのと、辺りにクラクションが鳴り響くのが同時だった。
振り返ると目の前に大型トラックが迫っていた――
あちゃー……これ、死んだかなぁ……
まぁ、どうでもいいか――
死ぬ直前は走馬灯が見えると聞いていたけれど、そんなものはなく――
ただ、目の前に迫るトラックがコマ送りのようにゆっくり近づいてくるだけだった。
子猫だけは守ろう――抱きしめて、目を瞑った。
いつまで経っても衝撃は来ない。
――即死ってこんな感じ?恐る恐る目を開く。
そこは草原だった。仰向けに寝転がって空を見上げていた。
空は透き通るほどに青い。
自分の身に何が起きたのか分からなかった。
これは夢――?
「お目覚めになったのですね、姫。」
優しげな男の声が頭の上から響く。
暖かい……。
誰かが手を握ってくれていた。心地よいまどろみの中、温もりの方に振り向くと間近に覗き込む男の顔があった。
「な、な、なに!?」
驚いて飛び起きる。目の前の青年は端正な顔立ちで、見た目は西洋人の様だった。
青い瞳、金色の髪。少しそばかすのある頬。文句のつけようのない美形である。
不審な点はその青年が西洋風の甲冑を身にまとっていることだった。
「これは失礼を……。
そう言って片膝を着くとクリスの手のひらに口づけをした。
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