第2話言語学者

 もしも、話すのがめんどくさい相手に遭遇してしまったときに君ならどのように対応するだろうか?笑顔で対応しきるだろうか?相手次第なところもあるが、一番無難なやり方は「無視する」である。これは相手に対して興味がないと示すようなものであり、失礼と思うかもしれないが、日常の些細なことを人間は記憶するようなことをしない。しかも、辛みがダルいう奴は大抵、自分の話が面白いと思っているので傷つくことはない。おっと、今お前だろと思った奴は寝る前に耳元で蚊の子守歌を聞くことになるだろう。


 大学英語の授業の時間。隣の席にはひでさんではなくて、正直あまり得意ではない相手コンソンが座っていた。勘違いしないでほしいのは、コンソンはあだ名であること。ちゃんとした純日本人である。そしてもう1つ、コンソンのことを嫌いでないということ。でも、正直秀さんと一緒にいる方が数倍楽である。なぜなら………………。


 この授業のスタートは教授のある発言からと言っても過言ではない。


「言語学者の人なら英語ペラペラなんですよね?って、よく言われますけどそういうわけではなくて、言語学者はご学者と違うから別に英語がペラペラなわけではないんですよ。あくまで、その言語の成り立ちや文字の並びなどに興味があるだけです。まあ、文法は好きですけどね」


 ここで俺は今ここで先生のことをどのようにいじってたら最高の料理ができるかを周りの視界が見えなくなるくらい真剣に考える。しかし、大したものが思いつかないので、ジャブ程度で済ませる。


「言語学で英語を勉強をしているのに、英語を話せないなんて、赤信号を手を挙げてわたるようなものだよな」


 世間一般からは無駄な努力をしているように見えているまたは、意味が理解できないという意味で言ってみた。「普通に伝わりづらいよ」などのツッコミが欲しいが、コンソンは俺を超えてくる。


「なるほど、ランニングしているときに赤信号で止められるのが非常にストレスだったが、手を挙げてわたればいいのか」


「撥ねられるわ!」


 そう、そうなのだ。コンソンは純粋というか何というか、陸上競技が大好きで人間として生きていくうえで必要な頭のねじが99本くらいは備え付けられていない。大勢の人と一緒にいるときは素でいてくれるだけで面白いが、正直一対一で素ボケを連発されまっくたら流石にしんどい。あと、俺はボケるのが好きなのにコンソンといると、はさみで紙を切るのが必然のようにツッコミ役にされる。


「じゃあ、青まで待てと?」


「信号機の色の持つ意味をご存じない?」


「学校で習ったか?義務教育でないくせに縛られる必要はない」


「幼児期までの義務教育を知りませんか?」


 こんな奴でも勉強はできるから解せぬ。よくいる勉強できるけど、生活学力皆無の奴もここまでくれば世界ギネス記録に載るのではないか。楽しく授業を受けたいのに、こんなのは俺がつかれるだけだ……。ハア、教室の隅っこで力の入っていない気だるげなため息に一人だけ反応するものがいた。隣に居やがるコンソンだ。


「どうしたりくちゃん、元気ないな。ランニングが足りてないんじゃないか?」


「そんなたんぱく質が足りてないんじゃないかみたいに言われても……人はランニングで栄養は取っていません」


 コンソンは俺を道路で撥ねられたカエルを見るような憐れみを含めた視線を送る。


「え?そうなの、可哀想~~俺が元気を出させてやる。ワッショーーーーーーイ!!」


「情緒不安定なん?哀から喜への変わり具合、大きな国道が走る押しボタン式の信号機やん」


 それから五秒間隔でワッショイと呟きながら、俺に対してワンパターンという少ないバリエーションのかまちょをしてきた。無論、ガン無視を決めたが逆にストレスだった気がする。
























 


 

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