盤上で交わされるのは、勝敗ではなく、生き方の選択。
『裏切り』か、『死』か。
過酷な二者択一を突き付ける「禽将棋」(古将棋の一種)の独創的な世界観。
その一手一手に、登場人物たちの信念、後悔、愛情、孤独が積み重なり、読み進めるほど戦いそのものが人生の対話へと変わっていく。
終盤は怒涛の伏線回収とともに世界の真相が明かされ、空虚と虚空、生命の循環、
そして「生きる」という答えが、
一つの大きな輪となって結ばれる。
読み終わった時、長い旅路の果てに夜明けを迎えたような、不思議な充足感が胸に残りました。
唯一無二の言葉選びと圧倒的な世界観を貫きながら、この物語が最後に届けてくれるのは、
「生きてほしい」という静かで優しい願い。
これは将棋を描いた物語ではない。
命を託し合う翼たちの叙事詩である。
実在するボードゲーム「禽将棋」を題材にした唯一無二の小説です。
戦さ場に生まれし鵼(ヌエ)は、其の猛き翼、尚も乾かざる間、渦中に舞う。
疾風か紫電か、流れ堕つる星か、高速で飛び交う禽の群れは、敵味方、見境なく、荒ぶる魂に鋭き鉤爪を研ぐ。
此処は死闘の最前線、此処は逃げ場なき天穹。滑空する翼は孰れも、妖しく煌めく刃に似て、其の命は孰れも儚く見える。
裏切りか、然もなくば墜落か、鵼は懊悩し、戦慄する。此処は死線、此処は闘いの庭。其の翼の憩う場、止まり木もなけば葉蔭もない。
敵陣と本陣、或いは陰と陽。目紛しく変わり、裏返る。此処は千変万化の無限の戦さ場。其処に護るべき者、崇め奉る者は座すのか。
天守閣遥か遠く、俯瞰するも仰ぎ見るも、詳らかにならず。鵼は想う。我は駒に非ず、と。鵼は識る。激闘は唯の一局に非ず、と。