褒めて伸ばすタイプです。

 つい先日、ちょこちょこ読みに行っている同ジャンルの作品のコメント欄を覗いてみたら、「あなたの文章は他人ひとに読ませるレベルではない」と書き込んでいる人がいてビビりました。


 いや…それ思って…たとしても面と向かって言っちゃう?!

 いいんですよ別に。作品を公開するということは、賞賛と同時に批評もBANも受ける可能性があるってことですから。


 私が驚くのは、しかし、どうしてわざわざそういう否定的なコメントを、ご本人宛てに書くかなあ…という点です。

 文末に「頑張って下さい」とか書いたってダメですよ。ツラの皮が核シェルター並みに厚いか、すでに心臓が停まっているのでなければ、書き手なら誰だって、ボロクソに言われたら激凹みますよ。


 が、じゃあそれで、いっちょ発奮して、クソ評価に負けないいいものを書いてやろうという気になるかというと…多分なりませんね。

 

 ひとつは、くらった評価が図らずも当たっているものだった場合、そのレベルのものを出している時点で、書き手が自身の文章能力を客観視できていないと考えられるので、おそらく「どこが悪かったのか」が具体的にわからないはず(わかっていれば、言われる前に直している)。


 もうひとつは、評価が完全に的外れな場合。

 人間、自分の能力を超えた事象は正しく評価できませんから、十人中八人が「わかる」と言う文章でも、一人くらいは誤読する人が必ずいる(残る一人は最初から読む気が無い)。

 批評者の能力<書き手の能力 だった場合、そんな低評価は気分が悪くなりこそすれマトモに取り合うに値しませんから完全無視。


 だから、私個人は、手厳しく批判するのは自由だけれど、いいものを書いてほしいと望むなら、まずはあなたが「他人ひと様に見せられる文章」としてまるっと書き直すくらいのお手本を見せてくれたらね、と常々思っているのです。

 もっと納得しやすい、飲み込みやすい方法で示してほしい。優れた批評者ならそれくらいお手のもののはず。

 それが難しいなら、あなたがどの程度の技量をもった書き手なのか見せてほしい(読みに行くので、足跡を残してほしい)。

 今までカクヨムにそんなひどい批評コメントを残したことはありませんが、もし私自身が書き込むとしたら、その覚悟でやる。それでカウンターくらいそうなら最初から書き込まない(チキンハート)。


 とはいえ、賞賛以前に批評がくるのも珍しいほどの供給過少の過疎ジャンルなんですよね…。なので、書いてくれているだけでも有難い。多少文章がまずかろうが、設定に穴があろうが、大抵のことには片目をつぶる! 文章云々はおいておいて、♥、応援コメント、たまにレビューも書く! 文章がマズかったら、それ以外で褒めるところを探す! お互い支え合って盛り上げていこうぜ! …と、本当は草葉の陰からテレパシーで応援したいコミュ障なのに、慣れないことをしています。


 それでも時にはそうも言っていられないことも――

 以前、

 私 :この間とんでもない歴史小説モノを見ちゃったんだけどさ…。

 友人:何。

 私 :ルネサンス期のイタリアの、それもローマに○○⚪︎○がいるっていう…。

 友人:え…いくら世界史に詳しくない私でも、それは違うと思うよ…?

 私 :だよね…? 私あの時代好きだからわりと読んでる方だと思うんだけど、一回も存在に言及されてるの見たことないし、不安になって◯◯⚪︎◯の成り立ち調べてみたけどどうも違うみたいだし…。

 友人:イタリア=○○⚪︎○ってイメージで書いちゃったんだろうねえ…。おかしいって言ってあげたら?

 私 :えっ嫌だよ。だって小説の根幹に関わる設定なんだよ。全部書き直さなきゃいけなくなるでしょ。

 友人:それは確かに。

 私 :それにさ…他にも色々間違ってるとこあるし…褒めるとこ見つからないんだもん。それなのにそんなこと言ったら、私ただのイヤな奴だよ。

 友人:それもそうだね。じゃ放っとけば?


 という会話をしたのですが、果たしてそれが良かったのかどうか、今でも確信は持てない(笑)。


 友人は「嫌なら読まなきゃいいじゃん」と言いますが、私は読まずにはおれない。だって好き(なジャンル)だから。どうしても気になってしまう。因果な性格だ…。


 たしかに私は重箱の隅をつつくタイプのイヤな奴ですが、ちょっと調べればわかってしまうような、それも道路陥没級の穴を指摘しなかったことで、好きなジャンルの作品をひとつダメにする片棒を担いでしまったのではないか――「あ、このジャンルの書き手って、この程度なのか」と、新たに読みに来た人に思わせてしまう結果になりはしなかったか――と勝手にやきもきしているのです。

 そんな巨大な穴が目の前に開いているのに落ち込むくらいなんだから言ってもムダだったかもしれないし…でも言われなければ気づかないで同じ穴に落ちるかもしれないし…かといってあまりに穴が大きすぎて、私の社交能力ではどう足掻いてもオブラートに包みようがないし…etc.


 さらにこうも思う。

 誰か身近に、「ここ間違ってると思うよ」「ここはこうした方がいいんじゃない?」とやんわり、しかし的確に言ってくれる人はいなかったんだろうか、と。


 私は基本的に、創作は孤独なもの――誰も代わりに書いてくれないのだから自分で書くしかない、全ての責任は自分にある――と思ってはいるものの、できれば互いに補完し合える相手がいればいいな、と望んでもいます。慣れ合いたいわけでも褒めてもらいたいわけではなく、誰でも自分の粗は見えにくいし、他人の粗はよく気づくものだから。

 その時も、人間ですから、苦い批評を賞賛の糖衣にくるんで差し出すくらいの心遣いはしたいと思うのですが。

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