ミリタリー好き、ドレスを塗る

 先日から、塗り絵を買ってきてひたすら色を塗っている。

 大人用のじゃなくて、そのへんの文房具店とかで昔から売っている、子供用の200円くらいのやつだ。

 それも、「おひめさま ドレスコレクション」みたいなのを買ってきたので、ほぼ全ページ、巻髪長髪フリルにレースにリボンにロングスカート、バラにガーベラにジュエリーに時にスイーツ…が見開きB4の画面いっぱいに詰め込まれている。


 仮にも絵描きなので、自分で下絵を描いて塗ればいいじゃないか(その方が安上がりだし)と思うのだけど、私が描くとほぼ99%軍服になるし(その昔、大鎧とか山伏とかを描いたことはある)、そうすると特定の色しか減らない。実際、STAEDTLERの水彩色鉛筆は寒色、特にオリーブグリーンとカーキとネイビーブルーの減りが異様に速い。あと茶系(皮革を塗るので)。

 灰色はペン立ての中で見えなくなるほどちびてしまっているし、黒は2回買い直した。

 私だってたまにはピンクや赤やパステルカラーに包まれてみたい。昔は大嫌いだったけど。


 何で軍服好きがフリフリひらひらのドレスなんか…と思われる向きもいらっしゃるだろうけど、私の中では機能美の極致のようなミリタリー・ユニフォームと、実用性皆無の貴族趣味的ドレスは、両極端という意味で同じジャンルに属しているものなのだ。

 ちなみに男性服で最も好きなのはロココのジュストコール(後の背広の原型)。女性用はヴィクトリア朝のバッスルドレス。時代がずれてますな。


 それに、自分が描いたものだと「大戦末期の物資不足で質が落ちたドイツ国防軍の色は…これか? いやこっちのが近いか?」と色合わせに無用な力が入るので、かえって疲れる。


 男の子向けに戦隊ヒーローの塗り絵とかあるんだから、どこかの会社が「たたかうひとシリーズ」みたいな形でミリタリー系の塗り絵を出してくれないものか。

 その場合、海軍の夏服はウェディングドレス同様ほぼ塗るとこないだろうけど。迷彩をパターン別に塗り分けるというのも死ぬほどめんどくさいだろうけど、ぐちゃぐちゃやっていればそれなりに形になりそうだから意外と楽しそう。「きみのすきな部隊のエンブレムをかいてみよう!」とかね。戦闘機のノーズアートとか、撃墜マークを描き込んだりするのだって似たようなものだし。

 …そう考えると、ホント、軍隊って、“おとこのこ”の好きなものがそのまま大規模化したものなのかもな。


 ま、ドレスを塗るのだって「上の布地の色が下地に反射して…」とかつい考えちゃうので、完全に何も考えてないわけじゃないんだけど。

 おまけに、よく見ると「このリボンとタブは共布だから1色でいけるとして…こっちのオーバースカートはどことつながっているんだ??」みたいに着方のわからないデザインになっていたりして、なるべく少ない色数で塗ろうとすると四色定理でも解いているかのような気になってくる。


 それでも、(ほぼ)無心に広範囲を柔らかい色鉛筆でぐりぐり塗り潰していくのは、文章創作に煮詰まったときの息抜きや精神集中に瞑想のような効果があるので、お手元に4色以上の色鉛筆がある方は一度お試しあれ。

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