第26話 ほっとしました

「最初はそんなに来ないよ…」


 と僕は読んでいました。


 火災から3か月、上のクリニックが再開することになりました。

 再開のチラシをこの薬局でも配り、さらに顧客に出している月1回のDMにも載せました。


 本当にいい薬局ですね。


 ですが僕はそんな読みでしたので、シップ、テープ、痛み止めの仕入れを多少増やした程度で…


「初日はそうでもないよな…」

 と…


 ああ、お花、蘭も送りました。

 けっこうするのですね。


 さてさて…


 朝から…


 2階に上がる患者さんの多いこと…


 ちょっと恐怖を感じました。

 でもこの曜日は処方箋の打ち込みの事務の人が午後から出社なのでそちらに集中しなくてはいけません。

 発注が…


 あれ…

 なかなか患者さん降りてこない…


 開店から1時間しても…


 やっと一人降りてきました。


「上のクリニックさん、どうですか…」

 当然うかがいます。


「あのね…大変よ…」


 顔見知りのその患者さんが話してくれました。


 まずはデータをすべて取り直しているので、問診表を全員記入しなくてはいけない。


 受付のコンピューターもまだスタッフさん不慣れなので打ち込みも時間がかかる。


 当然、レントゲンやらそれらも業者が来ているとはいえ同じ状況。


「そうなんですね…」


 と、お話している間に…


 数人が列をなしてカウンターへ。

 

 うん…? 

 処方箋の記載方が変わっている。

 まあ慣れだけど…


 あれ…

 QRコードつけてくれるって若先生言ってたのに…

 昔のままだ。

 まあ、仕方ないけれど…


「いやー今日は待ったよ…」

「若先生、いい男だね」


 そう、再開後から先生の長男さんもクリニックに入りました。

 ドクターが二人になったのです。


 いい調子でガンガン処方箋を入力し、薬袋、お薬手帳シール、領収書なんかを出力していたのですが…


 ちょっと…

 ということは…

 あ…!


 打ち込んだ処方箋をチェックすると…


「これ打ち直す」

 僕は薬剤師さんに言いました。

「どうしたの…」

「間違ってる、入力」

「そう…? 」

「うん…」

「どこが…」


「上の先生、二人になった…」

「あ…! 」


「若先生の処方箋も数枚ある」

「そうか! 」


 処方箋にはクリニック名、医療機関コード、その処方箋を書いたドクター名と印があります。


 今まで上からの処方箋は大先生だけだったのでね、それで打っていましたが…

 これからは注意しないとね。


 事務の人が僕と交代で入る時も

「ドクター名さ…気を付けないと…」

 と引継ぎました。



 そんなこともありましたが…

 患者さんたくさん来てくれました。


 僕は閉店間際…ドキドキでした。


 薬…足りるか…不足でいくか…


 でもなんとか間に合いました。

 心臓に悪かったですね。


 でも無事初日が終わりました。

 とにかくクリニックさん再開でほっとしました。

 いろいろありましたし、疲れましたし…

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