『宇宙拳人コズマ』の存在を知ったのは中学時代のことだ。
封印作品がテーマの書籍で取り上げられていた。といっても扱いは大きくなく、同じ特撮作品でも『ウルトラセブン』の12話や『サンダーマスク』のおまけといったもの。しかし私は妙にこの作品が気になった。「特撮作品で本気の殴り合いをした」という刺激的な部分に惹かれたのかもしれない。もしくは捻くれ者ゆえのマイナー志向か。
だが、ネットを漁っても書籍以上の情報はほとんど得られず、いつしか記憶の片隅へと追いやっていた。あれから十数年、このルポを読むことでようやく『宇宙拳人コズマ』の全容を知ることができた。作者には感謝しかない。
昭和の異種格闘技戦と言えば例のアリキックを思い浮かべる人も多いだろう。あの『世紀の凡戦』よりも前に『宇宙拳人コズマ』は放送された。そこで繰り広げられた激闘に次ぐ激闘は視聴率の低さもあり殆どの人間に知られぬまま、時代の闇へと消える筈だった。フィルムの発見によりそれは免れ、総合格闘技が発展し動画サイトなどで古流武術が再評価されている現在、ようやく陽の目を見た。
『宇宙拳人コズマ』。
この作品に秘められた死闘とドラマを是非、多くの人に知って欲しい。
※このレビューはフィクションです。でも、この作品が最高に面白いのは本当です。
昭和の時代、実戦至上主義を謳い政財界にも強い影響を持つ日本最大の武術団体があった。その名は叢雨流――その総帥である叢雨辰次郎はある時テレビ局に大きな圧力をかける。
特撮番組の放送をやめてもらいたいというのだ。曰く、特撮番組は格闘技でありながら、それでいて〝うそごと〟である。格闘技を実戦としてやっている自分たちにとってそんなものが子供たちに見られるのは迷惑だというのだ。
めちゃくちゃなクレームだ。しかしこのクレーマーにはそのめちゃくちゃを押し通す武力と権力があった。これに対しテレビ局局員の橘川はさらなるめちゃくちゃなカウンターを放つ。
だったらフィクションではない真剣勝負の特撮を撮ってやろうではないか、と。かくして作られたのが異色の特撮番組『宇宙拳人コズマ』である。その内容はコズマ役に抜擢された青年・風祭と、怪人役として送り込まれる叢雨流の刺客がルール無用で真剣勝負を繰り広げるというもの。
着ぐるみに隠されて一見わからないが、平気で流血はするし骨だって折れるという容赦ない格闘描写がたまらない。また週ごとに現れる叢雨流の刺客たちもただのやられ役ではなく、それぞれドラマを背負った魅力的な人物として描かれており、ファイトスタイルもボクシングをベースにした者から中国拳法の使い手やヨガの達人まで現れて実に多彩。
死闘で倒れたヒーローに代わって2号ヒーローが登場するなど特撮ものとしてのお約束もしっかり踏まえられており、格闘小説としても特撮ヒーローものとしても極上の一作に仕上がっている。
(「拳で道を切り開く! 特殊格闘技小説!」4選/文=柿崎憲)