会ってどうしたい?
『俺はすぐにそれを拾って圭太を追いかけた。職員室から教室に戻る途中で圭太に会って、「これお前のか?」って聞いた。圭太は驚いた顔をして、ポケットから巾着を取り出し中身を確認した。そして、巾着の中はどうやら空っぽだったらしい。「ありがとう。」と言って手を差し出した時に、事件は起こった。強風で窓を閉めておくように放送が流れたばかりだというのに、クラスメイトが窓を開けたのだ。そのタイミングは最悪で、俺の手から圭太の手へ移動する瞬間だった。圭太も俺もなんとかその紙切れを掴もうと思って頑張ったけど、小さな紙切れは、その強風に乗って窓の外へと飛んでいってしまったんだ。』
「うん。」
『その時、俺は、圭太に向かって「また書き直せばいい」って言ってしまったんだ。圭太が、自分で書いたおまじないか何かだと思い込んでいたから。その言葉を聞いた圭太は、ものすごく怒ったような悲しいようなぐちゃぐちゃの顔で俺に「書き直せないんだ、2度と!」と叫んで走っていってしまった。それから学校に来なくて、圭太に会ってない。で、俺は気がついたらこうなっていた。』
そうだ、そうだった。圭太に会いたい。話をしたら、会いたい気持ちが膨らんだ。
『会いたい!圭太に会いたいよ!』
抑えきれず叫んだ。
そんな俺に、零理は、
「優斗お兄ちゃんは、圭太さんに会ってどうしたいの?」
と、質問した。
―圭太に会ってどうしたい?―
あれ?どうしたかったんだっけ?
え!?あれ!?なんだ?
俺は、どうしたいんだ?何がしたかったんだ?
あそこで圭太を待って何をするつもりだったんだろう?
分からない。とても大事なことが、分からない。
俺は、頭を抱えて悶絶した。
―俺は一体、圭太に会って何がしたかったんだ?―
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