地獄と聞いて思い浮かぶのは凄惨な場面ばかりではあります。
色々な作品を見ても、地獄とはこうだという表現が多いのは、それだけ人の精神的な部分に働きかけるものがあることの証左なのでしょう。
翻って本作は、確かに地獄の凄惨な部分も描かれておりますが、その中での登場人(?)物達の機微や心情に重きを置いた作品です。
確かな筆致に、今は静かに運ぶ場面展開。
キャラクターそれぞれが思うところもあり、自然に行動している。生きているのだと理解できる。
地獄とは救われるための場所なのだと、頭では分かった気になっていても、本作を読んで改めて理解させられたのは新鮮な心持ちでした。
熱く盛り上がる展開は少ないのかもしれませんが、心を交感する繊細な描写を楽しめる非常に楽しい作品だと感じております。
これからも追いかけたいと思います。