番外編96 実は密かに話題をさらっていた

注*「禍福転変」498話

https://kakuyomu.jp/works/16817330658550287434/episodes/16818622173871607651

この後ぐらいのこぼれ話。

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 ここはラーヤナ国王都フォボスにあるソナトル・イブリース学園。その授業が行われる教室だった。

 金髪長髪青目に偽装したCランク冒険者のエアは、シンプルなスーツ姿でヒマリア国第三王女のアデライデの従者兼護衛をしていた。

 デフォルトが無表情なのに、いきなり笑えば、驚かない方がおかしい。


「もう少し愛想をよくして下さる?」


 アデライデがそう注文を付けたのだが、まさか、叶えられると思ってなかったのだろう。

 だからこそ、エアが笑ったのでかなり驚いていた。

 しばし、エアは作り笑顔対応をしていたことがあるが、それは滅多にないことだ、と、エアの妹のアイリスが教えている。


 もちろん、いきなり笑ったのは理由があった。

 実は、エア以外には見えなくなっている猫型精霊獣たちが、前足で顔を細くなるよう押さえたり、逆に頬を引っ張って横長にしたり、ウインクしたり、耳を押さえて丸い顔にしたり、と変顔したのだ。

 さすがのエアも思わず笑ってしまった、という状況だった。


「どうかなさいまして?」


 何があったのか分からず、アデライデはそう質問する。


「気になさらず」


 エアはさらりと流した。

 こんな教室で猫型精霊獣たちが顕現したら、大騒ぎだろう。

 可愛いだけではなく、ハーピーの大襲撃事件、「人工スタンピード古代魔法ASAM(アーサム)」事件が、ラーヤナ国でも「カラフルな猫型の魔物か使い魔」が結構な噂になっているのだ。


「…あの、王女殿下、お訊きしてもよろしいですか?平民に敬称を付けるのはどうしてでしょう?」


 そこで、思い切って側の席の男子生徒が質問して来た。周囲の生徒に視線で押し付けあった結果、彼になったわけだ。


「尊敬しているからですわ。先程のやり取りを聞いていらしたでしょう?エア殿はかなり博識で優秀なのです。十何桁もある計算のミスを、一目で指摘したぐらいですわ」


 アデライデの学力測定のため、高級宿『ホテルにゃーこや』の子供従業員たちが使っているにゃーこや製テキストを解かせ、エアが採点した時のことだ。

 アデライデは意外に数字に強く、大半は正解だった。


「それはすごい。では、商家のご子息といった所なのでしょうか?」


「いえ、Cランク冒険者です。ほんの二年前までは学ぶ機会もなく、読み書きがせいぜい、間違って覚えていたことも多かったです。計算が速いのは、駆け出しの頃、冒険者ギルドの買取査定の手伝いをしていたことがあるからです」


「あら、そうなのですか。では、たった二年で、エア殿はそこまで豊富な知識を覚えたと。何かコツでもございますの?」


「平民が知識を得ることは切実ですから、衣食住過不足なく満足している方には難しいかと」


 高級宿『ホテルにゃーこや』の子供従業員たちの物覚えが格段にいいのも、同じ理由だった。

 いい加減、話がそれているので、エアは課題をやるよう促し、自分は元通り、教室の後方に下がった。

 


 エアの外見年齢は、このクラスの生徒たちと変わらない十五歳ぐらいに見える、繊細な美貌の美少年だ。

 今は金髪長髪を襟元でくくり、青目に偽装しているが、貴族によくある色彩でも埋もれることはなく、気品すら感じられる。

 エアは貴族のようなゆったりとした優雅な立ち振る舞いではないものの、体重を感じさせない体幹に優れた動きは無駄がなくキレイで、見惚れる生徒たちも多かった。

 男女問わず。


 その存在感もあって、エアが初めてアデライデの従者として同行した日から、学園中の話題をさらっていた。

 ただ、誰もアデライデと恋仲だとは思わなかったのは、どちらも色気がないからだろう。


 外見は細身の美少年のエアに、女の子たちは頬を染め、「本日のエア様は…」ときゃっきゃっ、うふふ♪と楽しそうに日々噂話をしていたが、平民に、まして、王女の従者兼護衛には近付いて来ない。


 耳のいいエアにはすべて聞こえていたが、関わって来る気がないのなら自由にさせておいた。

 ものすごく、よくあることでもあったので、一々取り合っていられない、というのが本音だったが。



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