第35話 汎用人工知能の初期活用法

 汎用人工知能(AGI)の開発が進んでいる。あと、五年もすれば、汎用人工知能は完成するだろうというのが有力な見解になってきた。

 人類より賢い人工知能が人類の代わりに仕事をしてくれるのである。

 それでは、汎用人工知能はどのように使われるだろうか。


 まず、現在の人工知能はとても巨大である。サッカー場くらいの大きさがある。

 学習フェーズにはサッカー場の大きさのコンピュータを必要として、推論フェーズには数千ラック(ラックひとつで冷蔵庫一個くらい)に小型化できる。

 だが、ここから導き出される予測として、五年後に完成するAGIも、だいたいこれと同じくらいの大きさになるだろうということである。

 AGIはサッカー場の大きさのコンピュータとして誕生する。とても巨大だ。


 だから、AGIにロボットをくっつけて、作業をさせるとなると、できることが限られてくる。作業アーム、作業用小型ユニットなどを駆使して、AGIがすることのできることは何か。

 私の予想では、工場建設、巨大土木建設に使うのがせいぜいだろうという感じである。


 工場は、建設するのに、数千万円から数百億円と幅広くお金がかかる。

 AGIはサッカー場規模であれば、建設するのに数百億円かかるだろう。

 工場が安全に素早く高精度で高効率で建設されることを考えれば、AGIに工場を建設させることも充分に価値のあることだと思われる。


 私は、汎用人工知能が五年後に完成して、次々とAGIが工場建設をくり返すという未来でも、充分に満足いく未来である。AGIが最適化された工場設計をして、工場建設をしてくれるというのも、夢のある話だ。期待してしまう。


 AGIを小型化するにはブレイクスルーが必要になる。AGIは、誕生してすぐに小型の部品になっていて、等身大のロボットに取り付けることができるようなものではない。

 私はAGIの初期活用法をこのように予測する。


 続き。


 AGIは、ひとりの人類の知性を誰よりも超える知性であるので、まず、サッカー場の大きさのコンピュータで一体の等身大のロボットを動かすことから始める。

 世界のどの人類よりも優秀なロボットだ。世界一となると、優秀なロボットが一体いるだけでだいぶ変わって来る。サッカー場の大きさのコンピュータから無線でロボットを動かす。一体のロボットは最初に何をするだろうか。期待されているのは、「仕事の自動化」だ。「仕事の自動化」に関わる技術者の仕事をそのロボットにやってもらう。

 ロボットは、サッカー場の大きさのコンピュータが新しく建設されるたびに、二体に増え、三体に増える。こうして、人類より優秀なロボットが複数体で人類の「仕事の自動化」を推進する。どんな人類より優秀にだ。

 これが技術的特異点となる。

 こんな未来像が、今、私が描く未来像だ。

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