第33話 雨の伝承と渡来人が見つけた太陽の話
世界の始まりには雨があった。
ただ、雨がざあざあと降りつづけた。
ただ、雨がざあざあと降りつづけた。
世界にはただ雨だけがあり、雨がざあざあと降りつづけた。
大地も天上もなく、ただ雨が降りつづけた。
雲も海もなく、ただ雨が降りつづけた。
世界は長いこと、ただずっと雨が降っていた。
世界はただ雨が降るただそれだけの存在だった。
雨が降っていた。
ざあざあ、ざあざあ、雨が降っていた。
雨はいつまでも降りつづけ、世界はただそれだけだった。
世界は長いこと、ただずっと雨が降っていた。
雨が降るだけで悠久の時が流れた。
雨がいつまでも降りつづける世界。
それが世界の始まりだ。
雨が降っていた。
ざあざあ、ざあざあ、雨が降っていた。
雨がたまり、海ができた。
雨がいつまでも降りつづける世界。
雨が降り、海が大きくなった。
それでも、まだ雨が降った。
雨が降っていた。
ざあざあ、ざあざあ、雨が降っていた。
海神が矛で泥をこね、島を作った。
こうして、我が国はできた。
雨はいつまでも降っていた。
雨が降っていた。
ざあざあ、ざあざあ、雨が降っていた。
まだ文字のないむかし、海の外から人が船に乗ってやってきて、海神の島に上陸した。
「おまえたちはどこから来たのか」
海神は船でやってきた人にたずねた。
「遠い海で気付いたら船を漕いでいた」
「船を漕ぐ前は何をしていたのか」
「さあ、おれたちはその頃は雨影(うえい)だったんだと思う」
この雨影が渡来人である。
海神の子孫と、海を越えてやってきた雨影が同じ祖先を共通するというのがこの世界のからくりだ。
「何をしに来たのか」
「この世界に終わりをもたらすために来た」
渡来人が答えた。
「そんなことをいっても雨がやむものか」
「大丈夫だ。おれたちは太陽を探しに来たのだ」
渡来人がいった。
雨が降っていた。
ざあざあ、ざあざあ、雨が降っていた。
雨影は、太陽を求めて、続々と海の果てからやってきた。
雨影は太陽を探している。
雨影は海神と仲がよくなり、未知なる土地の財宝や冒険を島にもたらした。
雨が降りつづけることだけが同じだった。
渡来人は太陽を求めるあまり、とうとう、雨を登ることを考え出した。
渡来人は、雨を登っていった。
ぴょん、ぴょん、ぴょん、と雨を登っていった。
渡来人はあらゆる道具を駆使して、雨を登っていった。
そして、雨の向こうに太陽を見つけた。
太陽は、まぶしく光り、海と大地を照らした。
雨影も海神も太陽に照らされて人の姿をはっきりさせた。
そして、世界が終わり、太陽が昼間を照らす世界が始まった。
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