第2話 匂わせってやつ?

うちは高校を卒業してから1年フリーターでフラフラした後、看護師になろうと思って看護学校に入学した。

看護学校は実習やテストなど、毎日大急ぎでカリキュラムを消化していく。

平日は学校か病院で、週末に溜まった記録やテスト勉強をしないといけない。

加えてバイトもこなす。

正直、たくやに構っている余裕はなかったし、付き合って1年以上経つとまんねりになる部分もあって、寂しい思いをさせていたと思う。


その結果があの写真って事なんだろう。

こんな状態でもたくやが好きな自分が笑える。

浮気で最終的に戻ってくるって思ってる。

浮気されてもうちから別れるっていう選択肢がない。

自分でも思う…バカだ。

浮気が本気になってたくやが別れるって言ったらどうしよう…

不安になって会えない時間は泣きながら過ごした。

1人で考えてもこれからどうすれば良いのか?

考えても考えても自分からは何も出来そうもなくて、見なかったふりを続ける事にした。



「たくや、久しぶり!」

約1ヶ月ぶりにたくやと会った。

たくやの態度はいつもと変わらず。

浮気が本気になって、いきなり別れ話をされる最悪のパターンはなかった。ちょっと安心。



たくやがシャワーを浴びに行く。

また何か入ってたりする?

まさかね…そんな何回も入れんやろ?

おそるおそるジャンプをめくる。


…!!

使用済みのコンドームの空袋がはさまってる。


もしかして毎週何か入ってる?

積み重ねられたジャンプを確認するとだいたい毎週何か入ってる。

髪ゴム、おりものシートのつつみ、映画の半券2枚などなど。

シャワーが止まる音がした。

急いで元に積み直す。


え?これ何?捨てればいいものまではさまれてるって…

たまたまじゃなくこれ、わざとや。

わざわざゴミ箱から拾って入れるって事しないとおりものシートのつつみは入らんから、たくやは入れんよね。

これは写真の子がうちに対してしてるって事。

遠距離の彼女がいるのを知ってて、ジャンプ読むってわかっててやってる。

怖ー…

手が冷たくなる感覚と心拍数がやばい。


その時たくやの携帯に着信が入る。

死ぬほどビックリした。

結構ずっと鳴る。

折りたたみ携帯を開けて着信の名前見たいけど怖い。


「たくや、電話鳴ってる。めちゃくちゃ長い」

風呂場のドアを開けて伝える。

「わかった、とりあえず鳴らしといて」



その後、うちもシャワーあびて、異変に気付く。

化粧水と乳液がない。ボディクリームもない。

いつも置く場所は一緒のはずなのに、ない。

「たくや、うちの顔と身体に塗るやつないんやけど?」


「えー?一昨日あったと思ったけど?」


「だって、どこにもないよ?

一昨日どこにあったん?」


「えー…」

目そらして考えたふりみたいなんをしてる。

あー、やってんな、こいつ。

自分は見てないけど、一昨日、誰かが使ってたって事?…ですよね!!


「…コンビニ行ってくる」

こっち1回も見んと出かけていく。

顔にヤバいって書いてありますけど?


「…いってらっしゃい」


化粧水とまたプリン買ってきた。

ご機嫌取りか何かですか?


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