第20話 エルフの好奇心
「ねえ。帰っていいかしら」
開口一番、新米元エルフは不遜な態度で私を見下す。
「いいわけないでしょ。チケット代無駄にしないで」
私は、朝日奈藍は。えっと。うん。跡をつけていた。巡の跡を。
「私がいる意味あるのかしら」
舐め腐った元エルフ、日和は髪を弄りながらいますぐにでも帰りたそうにしている。
「意味とかそんなの関係ないわ。私たち二人がが跡をつける。それが重要なの」
「つまり意味はないのね」
日和は呆れていた。何よその態度は。後輩のくせに。
「それにしても。凄いわあいつ」
私は謎の耳をつけて恥じらいあう二人を見て、感心していた。
「何がすごいの?」
「巡が、目を輝かせている……!」
日和は二人を凝視して、わからないという顔をしていた。
「……どのへんが輝いているのかしら」
「わかんないの!? いつもより3%くらい目が明るいし、眉も0.2ミリ上がってる!」
私が熱弁すれば、日和は後ろに体を傾けて言ってはいけない一言を言った。
「……きも」
*
私は一つ学んだ。日和には食べ物を買い与えておけば万事解決だということを。
「藍、あなたいい人だったのね」
日和はクレープでくちをもごつかせて私を褒め称える。そう、これでいいのよこれで。
「あれは……、相当楽しんでるわね」
私は離れたところから巡たちを観察していた。
いまはアトラクションから降りてきて次を決めているところかしら。巡の眉が更に0.1ミリ上がったわ。
「ん、動いた。行くわよ」
二人が動き出したため私たちも跡をつけようとしたが、日和が動かないためクレープを取り上げてついて来させた。
「ちょっと、返しなさい」
「じゃあちゃんとついてきなさいよ。誰の金でこれ食べられてるの」
「巡のお金ね」
「…………」
痛いところを突いてくる。
「ひよりん。それは私たちの間では禁句よ」
「あら、いいじゃない。私は全く気にしてないわ。だって16歳の人間だから」
日和は誇っていた。
こいつ……。
「くっ……! なんて意識の低さだ……!」
「逆よ。高いのよ。あなたも見習うことね」
眩しい。その誇らしげな姿は実に眩しかった。
「って危な!」
私は日和を巻き込んで茂みに隠れる。
「ちょっと。何するのよ」
「見つかりそうだったから隠れたに決まってんでしょ、あ、こら、クレープ食べるな」
日和は私の手ごと奪ってクレープを貪る。
仕方ない。食べさせておくか。
「もう……。食べててもいいけどちゃんとついてきなさいよね」
「……歩くの疲れたわ。おぶって」
あまりに舐め腐っていたから尻に一発手のひらをお見舞いしてやった。
転性したら元エルフがついてきた 小麦ちゅるちゅる @hamhampasta
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