第2章 建国編

第52話 領地持ちになっちゃった

アダム王子とアミル殿下の結婚式が終わって1週間。


ようやく領地を挙げてのお祝いムードも終了したところで俺も本格的に動き出す。


『温泉の掘削』


そう、温泉掘りを行うのだ。ファンタスの街にあんな大きな屋敷があるのにわざわざそのために領地を貰ったんだからね。


この世界には4つの大国と多くの中小国がある。


もともとは小さな集落だったものが、長い戦乱の中で統廃合されていき、その中で抜きんでた国が4つ。ハヤトの住むファンタスの街があるシャウト王国。

そしてその西側にあるのがビスマス帝国。

王国と帝国に跨り北側に接するのがコーラス神王国。

同様に南側に接するのがベラミス共和国である。


その4ヶ国が大陸の中央に接しており、中小国がその周りに散らばっている感じである。


中央の大国4つが隣合ったからか、上手い具合に緊張状態が安定して保たれ、必然的に停戦協定が結ばれたのが100年ほど前。


周辺の中小国は4大国のどこかに組み込まれるか、小さな衝突を繰り返しているのがこの世界の今の状況だ。


だから、プレーヤーの中にもダンジョンには潜らず傭兵をやってる奴もいる。

ダンジョンの高階層で強力な魔物と戦うよりも対人戦の方がレベルアップに効果的なんて説もあったり。


少し話がそれたが、俺が貰ったのが4大国の国境地帯であり、東西は王国と帝国に、北はコーラス神王国、南はベラミス共和国と、僅かながら接している微妙な立ち位置にある。


東西はおよそ10キロメートル、南北はおよそ20キロメートルの縦長の土地。


中央が小高い丘になっており、そこから拡がる緩やかな斜面が特徴かな。


王国と帝国の双方から割譲された結果できたこの領地は、どちらの国にも属さない。


ではひとつの国かと言われれば困るのだが、4ヶ国の合意により、相互非干渉地域となっている。


俺は南北に細長いこの領地を、自由貿易の場にしようと考えた。


この領地とこの領地に接する4ヶ国の間には通行税や関税を掛けないようにしたのだ。


そうすることで、この土地は貿易の中間点として賑わいを見せ、その税収だけで十分潤うだろうと考えている。


「さてと、さっそく温泉を掘りたいところなんだけど、まずは領主としてやるべきことをやらないとな」


国境沿いを跨いだ土地と言うことで、領地の中央を南北に20キロメートルくらいの砦がある。


既に王国も帝国も守備兵は撤退しており、俺の領地との境界線辺りに新たな国境を設けている。


最初の仕事はこの元国境砦を撤去するところからだ。


砦は巨石を積上げて出来ている。


収納魔法を使い、端から巨石を収納していく単純作業を朝から続けていた。


「うーーん、単調で退屈だ。

まぁ、時間に余裕もあるし、ゆっくりとやるかな。


ところでセバスさんは上手くやってくれてるかな」


こうしている間に、セバスさんは元国境沿いの街や村を回って、いろいろと説明してくれている。


いろいろってなんだ?


いやよくわからんけど、まぁ、セバスさんに任せておけば上手くやってくれるさ。


南側のベラミス共和国との国境近くから始めて、1週間ほどでようやく北のコーラス神王国との国境まで辿り着いた。


ベラミス共和国とコーラス神王国それぞれとの国境線はおよそ3キロメートルほど。


どちらも壁しか無かったから、いちおう砦を築いておいたよ。


これまで回収しておいた巨石の一部を積んだだけだけど、あちらの守備兵を驚かすには十分だ。


舐められたら終わりだしね。


両国との国境沿いにあるいくつかの街や村を繋げて大きな街を作る。

これもセバスさんのアイデア。守備隊を置くために大きな兵站の集積地が必要なんだだそうで、それなり規模の街になりそう。


その近くには今も広大な農地が拡がっているから、ちょうど都合がいいみたいだ。


それから、中心の高台から4大国に向けて直線道路を4本作ることにした。


4大国間を安全に行き来するために作るんだけど、この街道沿いに宿場町をいくつか作るつもりだ。


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