第14話 初進入。ダイヤモンドダンジョン

「セバスさん。このお屋敷で働いてくれている皆さんは、どちら様でしょうか?」


初めて入った家にはセバスさんを含め、結構な人数の人達が先に居た。


「私達のことでしょうか?


そうですね、失礼いたしました。


ハヤト様はこの国の方ではありませんでしたね。


この国では、お屋敷の使用人は屋敷の一部として、オーナーが代わってもそのまま雇用が継続されるのです」


「とすると、セバスさん達は前の持主からこの屋敷に居られると」


「はい、わたしの一族は代々このお屋敷でお世話になっております。


このお屋敷の前の主は男爵様でしたので、使用人の数もそれなりにおります」


これだけ使用人が居たら月々の維持費が大変なんじゃないのかな。


とはいえ、解雇するのは気が引けるし。


そういえば、この家の賃料ってどうなってたっけ。


家の家賃も気になるけど、俺にはもう1つ気になることがあった。


こちらから向こうの現実世界に戻ってる時間はどういう扱いになるのかだ。


こちらに来ている間は向こうでは時間が進まないことは分かってる。


だけど反対は?


こちらにも家が出来て、俺を待ってくれている人が出来た。


もし、向こうの現実世界に行っている間、時間が同じように進んだら、困ることも出てくるんじゃないか?


これは早いうちに試しておかねば。






「セバスさん、ちょっとダンジョンに行ってきます。


しばらく戻って来ないかもしれませんが、よろしくお願いします」


「承知致しました。行ってらっしゃいませ」


翌日の朝、俺は冒険者ギルドに寄ってダイヤモンドのダンジョンに行くことを話してから、そのままダイヤモンドのダンジョンへと向かった。


初めてダイヤモンドのダンジョンへとやって来たが、入口の前には出店がチラホラと建ち始めている。


俺が潜り始めたら、攻略し終えたフロアに冒険者達が入って来るだろうから、彼らを狙っての店なんだろう。


全く商魂逞しいものである。


「おおーい、頑張ってくれよーー。期待してるからなーー」


俺の姿を見て屋台を建てている大工や商人達が、声を掛けてくる。


その明るい声に手を振りながら入口へと歩いて行くと、商工ギルドのギルドマスターであるショウコウさん(仮)を見付けた。


「ギルドマスター、こんにちわ」


「おいおい、そろそろ名前で呼んでくれよ、って自己紹介してなかったな。


俺の名はショウコウだ。


よろしくな」


………………


商工ギルドのギルドマスターだからショウコウさん?


いや、俺が勝手に名前を付けたから、それがそのまま本当に名前になったんだろうな。


これからは気を付けなきゃ。


「ショウコウさん、ちょっとお聞きしたいことが。


あのお屋敷の件なんですけど、家賃ってどうなりますか?」


「あぁ、あの屋敷か。


あれはタダで良いぞ。正確には商工ギルドの社宅扱いだな。


いつまでもそのまま主不在にしとくわけにもいかないし、お前さんが住んでくれたら助かるよ」


「あの使用人さん達の給与もですか?」


「あぁ、屋敷に住んで税金を払ったら、彼らの給与は国が出してくれるんだよ。


まぁ、国の雇用対策ってヤツだな。


そうそう、税金もこっちで持つから。


その代わり、しっかりとダンジョン攻略頼むぜ」


うまい話には何かありそうだけど、俺がダンジョン攻略すれば街は潤うし、この街に根を下ろせよってことかな。


「ありがとうございます。


じゃあ、早速ダンジョンに潜って来ますね」


「あぁ、気を付けてな」


ショウコウさんに見送られて、ダンジョンの入口までやって来た。


未だ、門番も居ないけど、冒険者ギルドから門の鍵は預かって来ている。


ガチャガチャ


大きな南京錠を開けて中に入る。


門を閉めたら、鍵の近くに開いている隙間から手を伸ばして、南京錠を閉めておく。


これで誰も入ってこれないはずだ。


「さぁ行きますかね」


独り言ちて歩を進める。


今日の目標は1番近くのセーブポイントだ。


向こうでの滞在時間がこちらでどのくらいになるのかをチェックするのが目的だしね。

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