第8話 ソロでルビーのダンジョンに突入だ

竜の全身鎧をNPC特典で手に入れた後、直ぐに皆んなと別れて現実の部屋に戻る。


今の時刻は午前3時。なんかいろいろあって、少し疲れたみたい。


ひと眠りするか………


起きたのは日曜日の昼過ぎ。


ゲーム機に向かって装備を確認してみる。


先ずは昨夜セーブした現実モードでロードしてみる。


うん、ちゃんと竜の全身鎧を着てるな。


保存して部屋に戻ると、今度はゲームとして保存した記録をロードしてみる。


装備は…軽鎧だった。


うーーん、情報を整理しようか。


まず、先週の土曜日にあり得ない体験をしてからゲームを開くと現実モードとゲームモードがあった。


ゲームモードはいつも通りだけど、現実モードは俺自身がゲームの世界に入り込んでしまうみたいだな。


現実モードでは、他のプレーヤーからはアバターみたいに見えているらしい。


それとゲームモードでは話すことの無いNPCとも話せるし、入れなかった場所にも入れるようだな。


それと現実モードでNPC特典?で購入した商品は現実モードでしか使えないみたい。


逆にゲームモードで手に入れた武器は現実モードでも使えるけど、NPC特典で手に入れた商品の方がかなり性能が高そうだ。


今のところだけどね。


なんとなく現実モードを理解したけど、まだまだ、分からないことだらけだな。


例えば死んだらどうなるのかとか。


試そうなんて思わないけどな。


とりあえず強力な武器と防具が手に入ったから、ちょっとソロで試してみようか。


ゲーム機の電源をオンして、昨晩保存したばかりの現実モードをロードする。


すうーーっと浮き上がるような感覚が終わると、教会のセーブポイントに出る。


「さぁて、ルビーのダンジョンにでも行きますか」


独りごちて、ダンジョンへの道を歩き出した。


ルビーのダンジョン。


この街にある5つのダンジョンのうち難易度が上から2番目。


地下25階層にあるボスを倒せば、最後のダイヤモンドのダンジョンへの道が現れるらしい。


らしいというのはまだそこに辿り着いた者がいないから。


メーカー公式サイトにはダイヤモンドのダンジョンについては書かれているのだが、その入口がどうしても見付からない。


裏サイトの情報で、ルビーを攻略したらダイヤモンドの入口が出てくるって書かれているから、皆んなそう思っているだけだ。


そして非公式ながらボス部屋に1番最初に近付いたのは俺だな。


たぶんだけど…


まぁ、この街では決して手に入らないような強力な装備を手に入れたし、頑張れば何とかなるような気がする。


ダンジョンの横にある詰所に顔を出す。


ここで薬草やらポーションなんかを買えるのだ。


「おう!ジョウイチじゃねーか!


今日はソロで潜るのか?」


ゲームモードじゃカウンター越しに必要な物を購入するだけで、NPCと話すことなんてあり得ない。


でも、今は俺もNPCのひとりになってるから、いつもそこいらにいる年配の冒険者から声を掛けられた。


「あぁ、いつものメンバーは今日は来れないからな。


久しぶりのソロさ」


「その装備、それドワーフのドグラスのところのやつじゃねえのか?


よくアイツが売ったな」


羨ましそうに俺の防具を触りまくってる。


正直気持ち悪いから、やめて欲しい。


「俺も一緒に行ってやりたいが、お前ら最下層に一番近いパーティだもんな。


足手まといになっちまうやな。


頑張って攻略してきてくれや」


それから何人かに声を掛けられる。


主にユカリとマリアのことについてだったんだからけどね。


「行ってくるよ」


見送ってくれるNPC冒険者達に手を挙げて、俺は地下20階へと転移した。


地下20階に着いたら直ぐにセーブして、真っ直ぐに『求婚の花弁』のあるモンスターハウスへと向かう。


中に入ると早速ウルフ魔獣達の大群が襲ってきた。


雷魔法を放ち無差別に斃していく。


おっと、雷耐性でもあったのか一匹のウルフに噛みつかれた。


痛っ……くねぇ。


前の軽鎧なら穴が開いてたくらいのダメージだったけど、ウルフの歯が折れたみたいだな。

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