第23話【龍治】
23話【龍治】
直は、俺が離れていつからこんな風になっていたんだろうか。
俺の起こした行動が、かえって直を傷つけるなんて。
『守ってやりたい』なんてただの自己満足。それは結果がなければただの戯言(ざれごと)に過ぎないし、『守っていた』と言う自分勝手な自己欲に過ぎないんだな。
よく親父が言っていた。
『自分の言動には責任を持て』
この時ばかりはその言葉が身を突き刺すように体感した。
「直……」
「……な、なに? りゅうちゃん」
掠れて呟いた直の声が逆に痛々しく感じる。
それでもこうやって返事をしてくれることに少しばかりの安心をして、
「お前、いつから?」
「え……?」
きょとんとしたような直の声。
ここまできたならもう直接直に聞くしかない。
少し強めに聞かないと直は必ず隠してくるから。
「いつから、やられてた?」
「……」
語尾を強めて聞いてはみたけど直は黙ってしまう。こう言うところは小学校の頃から変わってない直の意地の悪いところ。それでも俺は直に対しては苛々はしなかった。逆に変わってなくて、それを知っているのは俺だけだって密かに嬉しかったりもする。
「いつからやられてたかって聞いてんの!」
「……りゅうちゃんが、学校来なくなって、から……」
ちょっと早口で聞けば、直は本当に小さくだけどそう言ってくれた。
やっぱりそうだったんだな。俺が直から離れなければ――
離れなければ、直はこんなに殴られることも傷つくこともなかった。悔しさと自分の勝手な考え方に腹が立って俺は気づかない内に唇を噛み締めた。
俺の家に帰ると、俺は倉田に直の傷の手当てを頼み部屋にある壁掛け時計をちらりと見る――十八時前か。
『少し出かけてくる』
倉田にそう言い残して俺は着替えもそこそこにある場所に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます