アイデアと哲学に満ちた傑作短編!
- ★★★ Excellent!!!
冒頭のハードボイルド風味の、くたびれた、ちょっと不良っぽいおっさんがめちゃカッコ良くて、そこで先ず掴まれました。このイントロの感じがめちゃくちゃ好きでした。超自分好み。くたびれたおっさんと子供って、実に絵になりますよね。
そしてそのくたびれたおっさんが地球の「神」というのがまた意外性があって、驚かされました。その前に、そこに至る展開のジャンプの仕方が面白かったです。更にグッと興味を引かれた感じ。
また、なかなか全体的な状況が見えない中、徐々に物語のタネが明らかにされていくのも、ある種のミステリー風味があって良かったです。
なるほど、マンホールとはそういうことか、と。そしてその先にあるもの、陰謀等々。
大きな外枠の設定的には、最近の縦読み漫画でよく見かける王道なものではあると思います。しかし、安易なスカッと系には堕ちず、「神」同士の戦いという展開に持っていくのもまた新しいと思いました。王道を踏まえつつ、そこからの逸脱というか。
そして何と言っても、神の言葉の解釈! これはびっくりしました。なるほど、と目からうろこが落ちました。この男の子、すごい! というより、お母さんがすごいのか。こういった、作家ならではの視点というか、ものの見方、ある種の「教え」ですよね、そういうものを提出できるのが、作家としてすごい力量だと感服しました。
往々にして、WEB小説というものは、ややもすると、目先のキャッチーさ、王道的展開だけが先走り、テーマ性に乏しいというか、そういったきらいがありますが(自分のことは棚に上げるスタイルです)、この作品は違います。
エンタメ性自体も十分高いのですが、テーマ性と新たな視点をも非常に高いレベルで備えています。
全編、アイデアと哲学に満ちた傑作短編だと思いました。