　近くまで来てやっと気付いた。村から見えていた美しいお城が、まやかしだったということに。

「そんな……城が崩れて……」

　お兄さんの顔色が、みるみるうちに青白くなっていく。

　僕は僕で言葉を失っていた。けど声にならないながらも何か情報を得ようとして、僕は散らかった瓦礫やら半壊して内部がむき出しになったお城の様子を眺めたりしていた。

　そして家族が描かれた肖像画を見付けて、あっと納得したその時だった。僕は今までに経験したこともないような寒気に襲われた。

『わたくしへ会いに来てくれたの？　嬉しいわ』

「フロレッタ姫……！」

　奥の螺旋階段から下りてきたのは、ドレス姿のお姫様だった。でも。

「いや魔女！　今すぐ姫から出て行け！」

　お兄さんは僕を背後へ送り、鞘から力強く剣を引き抜いて言った。

『……なんのことかしら？』

　お姫様の姿を借りた魔女が小首を傾げる。

「とぼけるな！　じゃあなぜ城が倒壊している!?　我々に見せていた美しい城が魔法じゃなかったら、一体どう説明をするんだ！」

『フン。美しい？　こんな古い城が美しいなんて、あなた本気で言っているの？　私は醜いものが嫌いなのよ！』

「——っ危ない！」

　時を移さずお兄さんが僕に覆いかぶさる。それと同時に遠くの方で爆発音が鳴った。

「まさか……！」

　高らかに笑う声を背に、お兄さんは恐る恐る僕から顔を離す。その瞳に映った景色を見て、僕ははっとした。だから僕は、お兄さんに耳打ちをする。それから振り向いてみれば、やはり。村が炎で包まれていた。

「おのれ魔女！」

　お兄さんは剣先を魔女に向けた。そして怒りに震えながら僕へ言う。

「すまない大輝。僕は魔女を……姫を討つ！」

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