第14話 番外編 シルビア第一王女側近① ルイ・シュタイン絶対殺すマン爆誕

シルビア第一王女殿下側近見習いのシドは

外見にはおくびにも出さなかったが相当にイライラしていた


シドは故あってある特殊な里の出だったが

色々悩んだ挙句、三年前のウィンザー王国王城の悲劇の際に

王族の監視役として里から出て王女の側近見習いとなった


はっきり言って損な役回りなのは十分理解していたが

あの里に残ったままだと色々行き詰まりそうであった為に

あえて名乗りをあげたのである。


三年の年月でようやく気持ちの整理がつきはじめたと思った矢先に

今回の建国際の一件で里に戻らざるを得ない事になった


なぜ、わざわざ大好きだった栗を泣く泣く里に置いてきたのに

今更になって自分から火中の栗を拾いに行かなければいけないのか


あの馬鹿王子のせいで散々な目にあっている


実際にシドは王子の事をそこまで愚かだとは思ってはいないが

賢いとも思っていない

呆れるくらいに平凡

戦争のない平時の王政を担うにあたって

毒にも薬にもならない王になるだろうと思っている


平凡な能力しかないなら、平凡に生きてくれればそれなりに扱いやすい

なのになぜこうも自分の人生を振り回すのか

俺に恨みでもあるというなら対応もするが、

平凡に生きている結果で自分にクリティカルなダメージを与えてきやがる

なんてタチが悪い男なのだろうか


ガチャリと王女用執務室のドアが開いてシルビア王女が部屋に入ってきた。

アーク公爵公子の件が無ければこの女の方が余程有能であり

実際にはシドは王族と契約している訳では無く

三年前の事件の際にクラウド家と契約してここにいるので

クラウド家と関わる公的な仕事であれば何ら問題ないのだが

この女はこの女でアークに関わるプライベートな相談を俺にしてきやがる


そんなの頼むから自分の侍女にでも相談してくれよ


「ねえ、シドも今回の愚弟の件は知ってるでしょ?

アーク様、いいえここならダーリンでもいいか

ちょっとでも私の事嫌いになっちゃったと思う?」


「いえいえまさかまさかですよ、今回の魔道具爆発の際に

シルビア王女側近見習いの私が、いいですか

#シルビア王女の側近見習いの私がですよ__・__#

咄嗟に防護魔法を貼ったのでアーク様の大事な妹君が怪我一つ無かったんです。

ますます信頼される事があっても嫌われるなんてまさかまさかですよ」


何だこの一族は会うたびに俺の血圧を上げないと

気がすまない病気にでもかかっているのか?


「そうよね、でかしたわよシド、今年のボーナスは期待しててね」

「ありがとうございます、流石アーク様のお嫁様候補気前がいいですよね」

「シドったらもう、うまいんだから」

俺が契約しているのは、クラウド公爵家で

あんたらにボーナスあげる権限全くないし、既に公爵家から今回の報酬は貰っているけどな


「と言う訳で私は直ぐにでも里に戻るので二、三日お休みさせて頂きますね」

「え?」

「はい?」

「何でこの大変な時に里帰りするのよ」

「聞いてません?」

「聞いてないわ」


「今回の件でリーナ様が隣国に花嫁修行に行くのですが、

そこの家には可愛いらしいお年頃の娘さんがいるらしいんですよ

リーナ様の道中の護衛にアーク様がついて行った場合に

当然挨拶を兼ねて向こうの屋敷に数日泊まる事になりますが良いのです?」


隣国のお姫様の婚約を決めちゃおうかな

決めちゃおうかな

・・ちゃおうかな

・・・・おうかな


この瞬間王女の頭の中でかってのトラウマが蘇り

リフレインが叫びまくったのである


「そんな事態にならない様に

里からリーナ様の護衛兼お世話役の侍女を連れて来るんですよ」


王女は生まれたての子鹿の様にガクガク震えながら首を何度も縦に振っていた


サクラ・カザマ

シドはこれから会いに行く里の女性を思い浮かべ

人生は本当にままならないものだと痛感した


ーーーーーー

一章はこれにて完結となります。

ご愛読ありがとうございます。

明日以降も一日一話を目安に投稿していく予定です。


フォロー及び☆評価お願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る