【短歌連作】卯月の彼岸

鶴崎 和明(つるさき かずあき)

卯月の彼岸

くや 寝惚ねぼまなこの 衝撃は 睾丸こうがんに塗る トニックシャンプー


急げ急げ 急げと騒ぎ 朝ぼらけ 笑うカモメと 白き客船


死化粧を に施され さき父 白木しらきかんに 白銀しろかねの缶


父送る 夜更けの丘に いだく せいは心に せいと書くらし


八十と 余年よとせは箸に 摘まれけり 崩れぬ消えぬ 骨の太さよ


さかしらな 銀行員を いじめめ抜く 死亡届の 黒を消したく 


口之津くちのつと 幾度いくたび口に 眼前の 海に山にが 父を育てし


一年ひととせは 戻らぬわれは 肥後に在り 親友に告ぐ 揺るがぬ想い


てんも 震えるそらに 放たれる 卯月うづき半ばの 熊本地震


逃げよ逃げよ 逃げよと騒ぎ 息をく フェリーの汽笛 響く有明

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【短歌連作】卯月の彼岸 鶴崎 和明(つるさき かずあき) @Kazuaki_Tsuru

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