勇者をやめた男と、勇者を目指す少女。
二人が出会ったときから、静かで苛酷な修行の日々が始まる。
最初は薪割りや料理といった生活の基礎。
次第に剣の素振り、座学、魔法の初歩へと進み、少女は少しずつ「勇者らしさ」を身につけていく。
だが同時に、人を斬る重みや、戦場で迷えば死ぬという厳しさも突き付けられる。
やがて訪れるのは王都。
聖女エレン、魔法研究所のリーナ、騎士団長ウォウ――かつての仲間たちとの再会。
再会は懐かしさだけでなく、彼らの歩んできた道の違いをも照らし出す。
ときに激突し、ときに手を取り合いながら、師弟と旧友たちの関係は再び結ばれていく。
修行譚の醍醐味は、一歩ずつ進む姿にある。
最初は何もできなかった少女が、剣を握り、魔法を操り、仲間と肩を並べていく。
その過程を丁寧に描くからこそ、ラストの和解と握手に胸が熱くなる。