2話(8)

 「私が知ってるのは『花子さん事件』、だよ。学校の七不思議の二つ目って言われてる。」


 花子さん事件……?


 「この校舎じゃない方の校舎……HR教室がある方の校舎ね。

 そこの三階にあるお手洗いの、前から三つ目のドア。それを開けると、トイレにおかっぱの女の子が座ってて……」


 「う、うん…」



 「それで、そのおかっぱの女の子は言うの。『遊びましょ』ってね」


 「ひ、ひぇ」


 樹理ちゃんは怖かったのかこっちに身を寄せる。お寺の子の樹理ちゃんも、こういう話は怖いのかな。


 私はこういう怪談みたいなのは科学的だから信じない主義。


 なんだけど……酒天童子事件があってから、そういうのもちょっと信じるようになったんだ。


 だって、妖怪が目の前に現れたんだもん。そりゃあ、信じるようにもなるよね。


 それでも、やっぱり100%信じてる訳じゃない。だからこういう話はそこまで怖くない、かも。


 「花子さんに会ったって言ってる人はこれまでに4人。その4人全員が、同じことを言ってるの」


 「同じこと……?」


 「『花子さんに追いかけられて、屋上から落とされた』」


 お、落とされたって……。

 あまりの衝撃に、私は身震いしてしまう。


 「それで、その被害者たちはどうなったの」


 鬼龍院先輩がありすに尋ねる。そうだ、どうなったんだろう。被害者たちは助かったの?


 鬼龍院先輩の問いに、ありすは答える。


 「でも実際、その子たちは屋上から落ちてない。全部夢の中の話」


 夢……? それって、どういうこと?


 「その子たちみんな、トイレで横たわってうなされてたの。だから花子さんの出来事は現実で起きた訳じゃない、ってこと。」


 その四人がみんな、同じ夢を見てたってことなんだ。


 「この子たちみんな、これがあってから一回も学校に来てない。先生は何でか教えてくれないんだけど……。友達から聞いた話だと、寝たきりの子もいるって」


 「それって、大変なことじゃない……!」


 鈴木先輩が言う。

 

 「一人目の時は、何か新学期で疲れが出たんだろう……って軽く言われてたんだけど、被害者が二、三……そして、四人目になって、これ、そういうのじゃないってみんなわかってきた」


 四人も立て続けになったなんて、たしかに偶然じゃない……よね。

 

 「それで今はそのお手洗いは使用禁止になってるから新たな被害者は出てないけど、まだその子たちはずっと何らかの症状で苦しんでるから解決はしてない。

 まあ、そういう話かな。どう? これなら、第一条件クリアなんじゃない?」


 花子さん事件、思ったより強烈かも…!?

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