58.嗚呼、水中の君よ/夢月七海

作品名:嗚呼、水中の君よ

作者名:夢月七海

性癖:人間から人魚への変化

性癖:悪魔との契約

性癖:水中ドレス

性癖:無表情系イケメンに化けた人外

性癖:幼少期の出来事に一生を狂わされた男

性癖:一見被害者のようで存外にしたたかな女

作品URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330657352344556


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 一作目では全ての描写にこれでもかと性癖を込めた性癖小説を投稿して下さった夢月七海さんの二作目です。

 こちらも一作目同様性癖がたっぷり詰まった作品であり、2万字という中編でありながらも丁寧に性癖が織り込んであるのでするすると読み終えてしまうとても読みやすい性癖小説でした。


 出だしから『人間から人魚への変化』という性癖の描写と『悪魔との契約』という性癖の描写から始まるスタートダッシュが凄い作品なのですが、夢月七海さんはここで二つの性癖を並列に扱うのではなく、『人間から人魚への変化』が『悪魔との契約』の一部という入れ子構造型の高度な性癖表現をされています。

 性癖小説選手権では作中で掲示した性癖の素晴らしさを読者に伝えなければいけないという暗黙の了解があり、複数の性癖を掲示するという事はそれだけ多くの性癖の良さを作中で示さないといけないので執筆の難易度が上がるのが通常です。しかし、夢月七海さんは「自身の性癖描写の中に別の性癖描写を内封する」という入れ子構造型の性癖描写をする事で、作品の全体的な文字数や描写の数を減らしつつも複数の性癖を同時に現わすという画期的な性癖表現を行っており、読者からすれば読みやすく、作者からすれば同時に多数の性癖を現わせれるという、一石二鳥にも三鳥にもなる書き方をしています。

 その後も『水中ドレス』の描写が幾度も出るのに対して最後はドレスが水面に浮かび上がる事で物語を終えたり、『無表情系イケメンに化けた人外』と『幼少期の出来事に一生を狂わされた男』と『一見被害者のようで存外にしたたかな女』の三者がそれぞれ自身の欲望に忠実そうに見えてなんらかを我慢している複雑な関係となっていたりと、性癖を一つの描写で終わらせずに複数の役割を持たせて表現していて、丁寧にかつ存分に性癖を表現されているのが特徴的でした。

 これは読者としての勝手な感想になりますが、主役である三人が三人とも一般の人達に理解されない趣味を持つ者同士で、お互いにお互いの事を程度認めながらも一定の線引きをして付き合いを続けている所が現実の性癖倒錯者同士の配慮の姿に近い物を感じました。他人の性癖は笑っても馬鹿にはするなの精神ですね。

 『無表情系イケメンに化けた人外』と『幼少期の出来事に一生を狂わされた男』の二人は自分の心が望むように性癖に素直に生きていましたが、だからと言って無理矢理相手の性癖を変えさせたりはしていません。『一見被害者のようで存外にしたたかな女』も自ら望んで異形の姿になっており、他者を拒絶しないのも彼女也の生き方からくる物で押し付けられた物では無かったです。人魚になってしまった彼女がこれからどのように生きていくのか気になりますが、きっとなんとか上手くやっていくのでしょう。


 今作は夢月七海さんの「性癖を現わす性癖小説」というだけでなく、「性癖と共に生きた者の物語という意味での性癖小説」でもあるように思えました。

 二重の意味での「性癖小説」を投稿頂いた事に勝手に深い意味を感じています。素晴らしい作品をありがとうございました。

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