この物語は、人の死に付随する出来事を描いたように見えて、連綿と続いていた「人生そのもの」を描いたものだと思う。
生と死は対立する概念であるが、死によって初めて生が際立つものでもある。
隆や、その母、姉の苦しみは、この物語が始まるずっとずっと前からあったはずだ。
しかし、「おじいちゃんの死」をもって、僕たち読者は、ひょっとしたらこの物語の登場人物たちも、彼らの人生の苦悩を初めて知る。「こんなにもそばに居たのに助けられなかった」と後悔してももう遅い。そんな世知辛い現実をこの物語は突きつける。そうして、僕たちは、今身近にいる人の人生を考え、感謝を思い出し、自分にできることを考える。その人が生きている間に。
物語は、おじいちゃんが幽霊になって隆の元に帰って来たという、“可愛らしく”、同時にこの“幸せ”は長くは続くまいという、ほろ苦い結末を想起させる一場面から始まる。
「おじいちゃんはいつか隆に別れを告げて再びうつしよを旅立ち、隆は悲しみにくれるも、乗り越えて生きていく決意を固める」などというハッピーエンドを思い描いた僕は、すでに作者の術中にいた。物語は唐突に暗転し、大量の伏線と僕たちの驚きを掻っ攫いながら、想像もし得ない方向に進んでいく。「そんなに世界は甘くない」と、作者にお灸を据えられた思いである。
物語は最後の最後まで動き続ける。
いや、世界はとっくの昔に「止まって」いたのかもしれない。
伏線、叙述トリックとはこう書くのだというお手本となる一作。大変勉強になりました。
素敵な作品をありがとうございました。