第7話赤い点と、涙の「お願い」

そんな日々がずっと続くと思っていた。私もケイも、しかし突然その日々は崩される

私は日に日にトイレに行く回数が増えていった。そしてトイレを見るとそこには赤い点がぽつぽつと落ちていた。血尿だった。

その週末。私はまたも病院には連れて行かれた。お腹に超音波を当てられて画像診断を行う、結果は膀胱に腫瘍ができていた。しかも膀胱の半分が見えなくなるぐらい大きなものだった。その段階では良性とも悪性とも判断がつかないとも。ただ私の場合腎臓の半分がすでに機能しなくなっている状況でこれだけ大きな腫瘍をとって膀胱の大きさを制限することによってさらに腎臓に負荷がかかることが明らかなため、医者も即座に取ってしまった方がいいとは判断できかねていた。確かに判断は難しいだろう。ケイはワイとも話し合いを重ねていたが、手術をすることによる体の負担と腎臓のこと考えて手術をせずに治せる方向を模索すること選択してくれたようだ。

はじめは注射による投与。腫瘍が小さくなるかもとのことだったが効果の程はあまり感じられなかった。だが、今考えると進行を遅くする効果はあったのだろう。

次は投薬だった。固形の小さな飲み薬だが、それでも私には飲みづらいものだった。ケイはそれをさらに細かく砕いて、おやつにまぜて私に飲ませていた。やはりそれでもとてつもなくまずいので私は飲むのを拒んだ。そんななかケイは無理やり私に飲み込ませようと指でご飯をすくって私の喉におしこんだ。彼女は毎日うっすらと涙を浮かべながらも私に、「お願い」といいながら食事をとらせ続けた。

私は彼女の気持ちに答えたかったが体が勝手に拒んでしまう。本当に情けなかった

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