最強の魔弾使い、闇の亡者を葬りレベルアップする件

RYU

第1話 プロローグ

 ある日突然、異世界に召喚され『お前は、ただの人間ではない。魔王の血筋が入っている』と、言われたら、大抵の人は、頭が混乱してしまうことだろう。


 何故なら、殆どの人間は、自分のいる世界が全てでありその感覚で生きている。今いる世界から抜け出したい、違う世界に行ってみたいなどと言うことは、ふざけた事であり、馬鹿げているのだ。

 だが、どうしても夢見てしまう人も少なくはない。

 『今いる世界は、多数からなる内のほんの一つの世界に過ぎない』だとか、『世界は、無限に数多くのもろもろの世界だけが存在している』『世界とは、我々が知覚しているそのものである』等と言われているが、本当のことは、定かではない。


 俺は、幼少期まで自分は普通の人間だと思いながら暮らしていた。しかし、それまでトラウマの連続だった。養父の正体が化け物であり、人を喰らいながら生きてきた。幼稚園や学校の人からは酷いいじめにあった。自分で、奇妙な力に目覚めたからだ。

並の大人三人を凌駕する、腕力に身体能力、

この世界は、俺に優しくない、俺の居場所は何処にもないと、悟った。


そして、12になったある日の頃、突然、奇妙なゲートが開き、俺はこの世界にやってきた。


それから養護施設に保護され暮らしてきた。施設の人達はおだやかで優しい人ばかりだったが、奇妙な容貌から学校では馴染めず不良に苛めにあっていたこともあった。飼い犬を無惨に殺され、発狂し謎の力に目覚めた。


俺は、18の頃まで施設で育った。施設の先生は、俺を特別視するようになった。俺は重宝され、銃使いの能力に目覚めた。弾丸が無くとも念の力で銃を発砲させる、また、弾丸の軌道を自在に操れる、銃を自在に召喚させる事が出来る、そんな奇妙な力だ。


新しい世界は、俺にとって奇妙な連続だった。謎の亡者がわらわら出現し、俺は、銃使いに目覚めた。


ダークネスという名の亡者らは、奇妙な魔力を有し、生者の世界を蹂躙していた。生者を喰らい、それを糧とし、放埒していた。


そこで出逢ったのが、鮮やかなブロンドヘアの美少女だ。俺は、その少女との出逢いにより自分は普通の人間ではなく、魔王の血を受け継ぐ一族の末裔だと知らされた。


自分で自分の状況が理解できなく、頭が混乱してくる。だが、俺は自分の力を無くなった仲間達の仇を打つためにと、決めている。


そんな俺は、今日も銃を構えてダークネス退治に出掛ける。亡くなった仲間の存在を胸に、今夜もダークネスを葬るのだった。




暗がりの空の下、俺は高速道を移動していた。雨がザーザー滝のように振り続けている。


俺の目の前を、ダークネスが飛翔している。

ダークネスはセイレーンを彷彿とする容姿をしており、背中には漆黒の翼が生えている。


「何でこんなに早いんだよ・・・」

俺は、バイクに乗って移動していた。

スピードメーターは既に150を超えている。

ダークネスはクルリと180度振り返ると両眼から赤いレーダー照射した。俺は、装備してあるライフルの引き金をダークネス目掛けて引いた。銃口から放たれた無数の弾丸は、青い炎を纏いながら空を切り裂く。だが、弾丸は、赤いレーダーに直撃した。そのまま切断され、パラパラと落ちて転がった。レーダーは四方八方に線を描いた。すぐ側にある樹木は、切断されなぎ倒された。



ダークネスは、口から金切り声を発した。


道路は大きくヒビが割れ、俺の乗ったバイクは大きくジグザグによろけた。

俺は、ライフルの照準を再びダークネスの額に向けた。


「スキル展開。」


銃口から再び弾丸が発砲された。弾丸は、器用にレーダーを避け不規則な円軌道を描く。だが、それはダークネスの声に反響したのか軌道が逸れ翼に当たった。


「クソ…もう少しだったのに…」


ー体力削ぐが、仕方ない…


俺は、バイクに乗ったまま再びスキルを発動した。


バイクの下に青く光る幾何学模様の円盤が出現した。

このスキルは、便利なものだ。

足元に円盤を出現させると、空中でも重力に逆らって自由自在に移動することが出来る。


俺の乗ったバイクは、宙に浮き進んだ。


俺は、再びライフルをダークネスへと向ける。



再びスキルを発動し、銃口から弾丸を連射した。



ーと、その時だった。ダークネスは口から強烈な金切り声を発声させた。


弾丸は弾き返され川下へと沈んだ。

俺の発動させた足元の円盤は粉々に砕け、消えた。


俺の身体は、下へ下へと落下していく。


その時、ダークネスがよろけた。あの時、翼に放った弾丸が効いて来たのか…?


俺は、つかさず彼の頭部目掛けて弾丸を連射した。金切り声に反響したのか、僅かに軌道はズレてしまった。

だが、その弾丸はダークネスの翼に直撃さした。


だダークネスは浮力を失い下へ下へと落下していく。


俺と彼の身体は濁った深い川の底まで沈んでいき、そして浮上した。俺はひたすら彼の頭を押さえつける。額から冷や汗が滴り落ちてくる。


ダークネスは、打ち上げられた魚の様に口をパクパクしながらバタバタもがいていた。俺はライフルを構え、彼の額を狙うー。俺の体力は限界になっていた。すると、ダークネスの左手が俺の首を掴んだ。とてつもない握力だ。まるでプレス機に押しつぶされたかのような感覚を覚えた。俺はむせ込みながら、スキルを発動した。掌から、オーラの塊のような青い炎の塊を出現させ、稲妻のような勢いでダークネスの額にそれをぶつけた。


ダークネスの身体は、青白い炎に包まれた。彼女は、真顔のままそのままの体勢で水面をアメンボの如く後方に滑らかに移動し、俺と間合いを取った。そして、彼女は金切り声を上げながら両目からレーダー照射した。しかし威力は前より断然落ちてきている。レーダーは俺の右肩はかすり、上着から煙が出ている。感電したかの様な激痛が走り、ぐっと歯を噛み締めた。


雨は次第に強くなるー。


「ちっ、ちょこまか動くなよ。鼠が…」

ライフルの燃料も残り少ない。モタモタしてると切れてしまうー。

彼は口から煙が吹き出し、動きも鈍ってきた。俺は歯を噛み締め、ダークネスに照準を合わせた。レーダーは電光石火の如く彼の額に直撃した。ダークネスは、星屑の様に粉々になり静かに川の底に沈んだ。

青緑の川は不気味に静まり返り、ただそこにはひたすら雨に打たれる音だけが反響していた。

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