三十一話 綺麗な目を守っていた幼馴染み
私は、彼女のことをよく知っています。同い年の幼馴染みでした。
二人とも農家で、親達は田んぼや山に行ったら夕方まで帰って来ません。
家も隣同士でした。あれは、小学校にあがる前の年のことです。
少しませていた私はこの子と仲が良かった。もっと仲良くなりたかった。
そこで「お医者さんごっこ」をしよう、そうしようと思ったのです。
この子の家に、何気なく近づいて行った。やあってな感じで、ふらっと。
ちょうど庭で遊んでいたので、こっちこっちをして物陰へ来い来いした。
ひで子ちゃんは頭のいい子でした。みんな、お見通しでした。
てるちゃん 「あっ、ひで子ちゃん、あのね」
ひで子ちゃん「うん、なあに?」
てるちゃん 「おしてほしいこと、あんの、あれって、どうなってんの?」
ひで子ちゃん「あれって、あのこと?」
てるちゃん 「そう、そうだけど、だめだよね」
ひで子ちゃん「いいわよ、みせっこね。ねえ、てるちゃん、そっちがさきよ」
てるちゃん 「わかった。じゃん……。こんど、ひで子ちゃん」
と、その時である。一つ年上の兄貴が学校から運悪く帰って来た。
私たちは小さくなって隠れた。もう、空気ぶちこわしである。
ひで子ちゃん「にいちゃん、かえってきた」
てるちゃん 「(モヤモヤモヤモヤモヤモヤ……)」
ひで子ちゃんは、兄に続いて家の中に消えてった。もう、出て来なかった。
あー、兄が帰って来るのが、もう少し遅ければと思った。
今、思っても間が悪いとはこのこと、まあ、淡い思い出である。
こんな事があっての数年後、彼女のおかあさんが海で溺れて亡くなった。
あの人も美人だった。お母さん似の彼女は、影をまとうように。
成績が少し落ちるようになっていった。着てる服も、薄汚れてきた感じが。
私も母がいなかった。すさんだ目を。でも、ひで子ちゃんは綺麗な目をしてた。
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