第8話
――――如月動物病院――――
本日は特に変わった事も無く、此所ではいつも通りの穏やかな時間が過ぎていく。
幸人は自宅と病院を兼用していた。何時でも急来に対応する為に。
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「ふう……」
その日の夜、風呂上がりの幸人は手に缶ビールを持ちながら、目の前の小さなテーブルの前に座り込み、つまみも無しに一気にビールを飲み干した。
風呂上がりだというのに、黒いセーターと黒いジーンズというスタイルは、白衣を着れば何時でも対応するという顕れなのかもしれない。
一息付いた幸人は、部屋内をゆっくりと見回す。
本当に質素で小さな部屋だった。
白を基調とした、清涼感溢れるといえば聞こえは良いが、悪くいえば殺風景。
お洒落なインテリア等どこにも見当たらず、小さなテーブルの奥に、ディスクトップのパソコンと簡易机、その脇にパイプベッドとクローゼットが、無造作に“ただ並んで”置かれているだけだ。
“ニャア”
寛いでいる幸人の元に、飼い猫のジュウベエが何処からともなく歩み寄り、いつもの様に幸人の膝の上へと身を寄せる。
何気無い光景。ジュウベエは膝の上から見上げ、その片盲眼の瞳で幸人を見据えながら。
“それは早く撫でろジェスチャーなのか?”
一瞬の間を置いた刹那の事。
「――依頼が来てるぜ幸人」
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