じっくり味わう長編、序盤超えたら止まらなくなる
- ★★★ Excellent!!!
マイナすぎるぐらいの武将を主人公とした作品(沢森氏って、え、誰?と思いました。ググってもこの小説しか出てきません、マジ誰)、時々出る長崎県北弁も初めは読みにくかったけど、今は親しみやすいぐらい。ただの読者としてこんなこと言って真に失礼ですが、初めの100話ぐらいは結構読みにくかったので一度やめたんですが、今回は正直に言うと単に暇つぶしの気持ちで読み始めたんです。
でも、150話、200話を超えたあたりからは、ほんっっっとうに面白いですよ!一話の長さも伸び始めたんですし、読めば読むほど味が出る、スルメみたいな小説です。作者様の文章力が高まるのをまざまざと見せつけられた気分です。考証も豆知識も豊富で、かなりの研究をされたのが垣間見えます。途中で一時的にキャラたちが古文のような話し方を始めたのも新鮮です。()の中の注解や超・翻訳もあるので読めないことはないですし、少しずつ現代文とのバランスが調整されて、今はとっても読みやすくなりました。作者様がいろいろ試しているのを感じられて、現時点で800話も超えたんですから、なんというか、趣味と努力が滲み出る作品です。
話のスケールも大きいし、「これで最強だ!終わり!」ってわけでもないのが面白い。好都合主義はありますが、書き方がどんどん上手くなってくるので、話が進むにつれて違和感を感じさせなくなります。もしかしていけるんじゃね?と思ってしまいました(文系なんで技術発展の難しさにはちょっとピンときません)。
それと、個人的に好きなところの一つは、スペインとの戦争ですね。よくある転生モノでは、「こっちもガレオン船団作ったから勝てた!」とか、「倭寇戦法を駆使して小舟で接近して白刃戦で拿捕!」みたいに、とにかくヌエバ・エスパーニャのスペインが弱く描かれがちだけど、この作品ではわりと強敵として描かれていて、優れた装備を持っていてもそんなに楽な相手ではありませんでした。少なくとも個人的にはリアルさがあって楽しませていただきました。戦争経過の描写はちょっと詳しくはわかりませんが、多分軍オタの方も楽しめるのではないでしょうか。他のキャラも生き生きしていて、史実の行動ばかりをなぞる噛ませ犬ロボットではありません、そこも面白かったです。
唯一、女性の出番があんまりないのがちょっと残念かもしれません。まあ戦国時代ですしね……
こんな上から目線のレビューですみませんが、ほんまいいまん見させてもらいましたわい。いつかは完結するでしょうけど、まだまだ読み足りないので、続きも期待させていただきます!