2-14 持ち帰った物(臭い棒)
ゴブリンの匂いに耐えながら、それぞれゴブリンの胸の中央を切り裂き魔石を回収する。一応ゴブリンの持っていた木の棒も回収する。飛び散った血が臭い。
ゴブリンの死体は通路の脇に避けておく、2時間もすれば消えてしまうそうだ。
今回は試験だから、貸し出しの
通常の探索なら管理棟の受付に申請すれば、どちらか借りることが出来る。
そもそもゴブリンの死体を持ち帰る意味もないけど。
エモリさんは過去の探索時に自らが発見した、10トンまで入る自前の
ただ手に入れるには、25階層より下の階層でランダムで湧く
価格的にも軍や大店の商会ぐらいしか買う事が出来ない上に、売却・購入に関しては公的な手続きを経て許可が必須になっている。たとえ学術院の生徒が自分で
学術院の備品として使われているのは、過去の先輩たちが発見し自分で使う以外の物を学術院に売った物だという。容量にもよるが、
まだ探索する時間は充分ある。僕たちは奥へと進み探索を続けた。
その後の探索では、ゴブリンが2匹・3匹・1匹と遭遇。1階層に引き返す時にも2匹のゴブリンに遭遇したが、カエデと僕で難なく討伐し入り口まで戻った。
試験は時間を10分残して終了した。
同行した教官からは
「最初からあれだけの動ければ上出来だ。武器の選択も連携も問題ない。
事前に打ち合わせた合図も見事だ。」
というお褒めの言葉に続いて
「ただし、帰着時間がギリギリだ。今後は余裕を持った行動計画に留意しろ。
解体の時には、最低一人は周囲の警戒をしておけ。あまり欲張るのは感心しない。」
という苦言を頂いた。
確かにゴブリンの魔石を取る時に無警戒だった。それに戻る時にもう少し多くのゴブリンが出てきたら、探索時間が超過して減点されてたかもしれない。
ともあれ、僕たち3人は無事に『
寮に帰ってきて、無事に
【
「よし! 今夜はお祝いだ! ハルエ! あれの用意できてるよな!」
「もちろんですわ。とっておきの
ツバキさん、この二つに合う御食事の準備お願いしますね。私はお刺身が食べたいわ。」
「はい。かしこまりました。」
うわぁ…… またガータの銘酒が出てきたぞ。まさか…また樽なのか?
そんなことを考えていたら、サキが帰ってきて開口一番こう言い放った。
「なんか臭いわね……」
「確かに、そう言われてみれば…」
マチカさんも匂いに気が付いて僕たちを見た。
僕とアヤは思わず自分の服の匂いを…
くっさ!! …この匂いってゴブリンの匂いだよな。
「ゴブリンの返り血の匂いかな? とりあえず荷物置いて着替えてこようか。」
「そうですね。この匂いはさすがに…シャワーでさっぱりしてきたいです。」
「私は後でシャワーをあびる。それよりモフモフ成分の補給を…
キナコちゃ~ん!ダイフクちゃ~ん!」
カエデが近寄ると慌てて2匹が逃げ出した。
キナコは台所のツバキの足元に逃げ込み、ダイフクは部屋の隅っこでカエデを威嚇して唸っている。
「カエデさん、ダイフクがゴブリン臭いと唸ってますわ。
さっさと着替えてシャワーを浴びて、その臭い匂いを洗い落してきてください!」
その言葉にカエデはしょんぼりと項垂れる。
「…はぁ~…ぃ……」
僕は自室に戻り、荷物を整理している途中で気が付いた。回収したゴブリンの木の棒… 全部僕が持って帰ってきてた…
木の棒に鼻を近づける …… うわっ! くっさ!!!
「この
荷物に括り付けてあった
「置き場所は… とりあえず、玄関脇でいいか。」
寮の中に戻り着替えに向かおうとした時に…
外の小屋にいた小太郎と小次郎が、尋常じゃない勢いで吠え始めた。
「ガウッ! ガウガウッ!」
「バウバウバウッ! バウバウッ!」
その声に気が付いたサキが慌てて寮の外に飛び出す。そしてすぐに戻ってくるとものすごい形相でハルトを怒鳴りつけた。
「馬ー鹿ーハールートー!!
なんてものをあの子たちの小屋の前に置いたんですか!!!
あんなものは寮の裏に置いてきなさい!!!」
たとえ布に包んでも
「ごめんなさい! すぐに片付けます!!」
外に飛び出して、
「なんで、あんなもの持って帰って… お説教は後ですわ!
臭いから、さっさとシャワーを浴びて来なさい!!」
僕がシャワーを浴び、着替えて居間に行くと、既に主役3人をそっちのけで酒盛りが始まっていた。案の定、樽酒だよ… どれだけ飲むつもりなんだ?
席に着くと、すっかり僕の膝の上が定位置になったキナコがすかさず飛び乗ってくる。
しっかりと僕の席にもお酒の入った升が二つ置いてある。
おっと、酔っぱらって話が通じなくなる前に確認しておかないと。
「あの…エモリさん、休み中に
「おう。そうだ! いつでもいいぞ。
整備も終わったから準備はばっちりだ!」
エモリさんは升酒をくいっと煽ってからニヤリとする。
「もちろん私も加わってもいいんですよね。」
シャワーを浴びて着替えてきたアヤがそう話しながら席に着いた。
「え? アヤ様も探索に加わるのですか?
どこまで潜るつもりですか? 危険ではありませんの?」
ハルエがお酒を飲む手を止めた。
「当然、アヤ様もだよ。
この休暇中にある程度は、
無理しないで日帰りが可能な5階層、余裕があるなら
マヨーリがそう話すとエモリもマチカも頷く。
「いつですの? 私も当然参加してよろしいのですよね。
お兄さまと一緒に…えへへ…」
「休み中はずっとモフモフ天国の予定だったのに…」
「ご自分のお仕事を、忘れないでいただきたいですわ。
あなたはご自分のお仕事を忘れないでください。
アヤ様の護衛が最優先ですからね。」
カエデにサキが絡み始めた。
「計画を立てるのは後にしようか。今日はアヤ様とカエデ、ハルトのお祝いだから。
それにもし探索するなら、イエーカー様にも報告しないといけないからね。」
ひとまずエモリさんは探索に同行する約束を覚えていてくれた。
いよいよ本格的に
エモリさんも約束を覚えていてくれたし、僕も飲もう。
やっぱりツバキさんの料理は絶品だな。このお刺身も美味しいな、鯉のあらいとは全然違うよ。
……それはそうとして、エモリさんもハルエさんも…マチカさんまで… それ何杯目?
え? 僕ももっと飲めって?
断る事が上手くなっていた僕は、キナコが膝の上から降りたタイミングで何とか飲み過ぎないうちに自室に避難することが出来た。
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