第19話 未知への入り口

「さて、着いたは良いもの。」


「なかなか列が進まないねぇ〜」


私達は皇国ハクブツカンなる建物の前にいる。

何してるかって?

私達はハクブツカンという建物を囲うように覆っている黒い緑の柵に添うように伸びる長い列に並んでる。

なんでもカイカン?前なのでこうして並んでるとの事。

前にも列というのに参加した事があるがその時は仕事を貰えた。

だからこれは何か貰う為に並ぶのだろう。

この建物では何が貰えるんだろう。

そう期待してると何やら物腰の柔らかそうな男と人相の悪い男の二人が近づいて来た。


「やぁ、坊やにお嬢さん方。こんなに朝早くから列に並んで大変でしょう?おじさんが並んでおくから休憩して来なさい。」


見ず知らずなおじさんがそう言ってくれた。

私は別に疲れてもいないがせっかくの好意だ。

無下にするのも悪い。

そう思った時、トーマスが怒気を含んだ声で言った。


「結構です。僕達に関わらないで下さい。」


トーマス。いったい何を起こっているんだ?

私が困惑してるともう1人の男が声を荒げて話す。


「ガキが!大人に素直に従えばいいんだよ!」


なんだ?あの男の態度は?

そう思っていると先に話してたリーダーと思われる男が手を制して改めてこちらに話しかけてきた。


「坊や。すまないね。こいつ気が短いんだ。それより子供だろうと2度と立ち上がれなくなるまで殴っちまうんだ。なぁ、俺が言いたい事わかるよな?」


彼らは明らかに脅している。

その事に少し怒りが湧き出して来る。

それに反応したのか体内のエーテルがような感覚をする。

いけない。気持ちを落ち着かせよう。

そう思い、父に教わった騎士の信条を心の中で唱える。


私が落ち着こうとしてる時も話は進んで行く。


「貴方が何かを言おうとそんなのどうでもいい。早くどっか行って下さい。」


男はため息を突くと、残念だよと呟き、手を降る。


それを合図に控えていた男が私達に近づく。


「悪く思うなよ!」


男がトーマスに掴みかかろうとしたのでその腕に体当たりをして逸らす。


「いてぇな!」


男が両手を広げて襲いかかって来たので屈んで脚にぶつかり上体をあげ、男の体を掬いあげて転ばせる。


上手な人は一回転させて投げるらしいのだが私の場合は空中で跳ね、顔面から顔を打ちつけた。

このままだと大人相手には不十分だと思い両足を持ちあげ男の弱点だと教わった股の間を踏む。


「------------!」


男が言葉にならないうめき声をあげて暴れ出したので両足を離して離れる。


「な!」


リーダーの男が私が男を倒した事に驚いている。


「さて、僕の親友が失礼しました。でもお互い様ですよね。」


トーマスが笑顔のまま話をする。

その笑顔は敵対心を隠しもしない笑顔だった。


「改めて言います。どこかに行って下さい。」


「くっ!」


男は倒れてる男を抱えてその場から逃げて行った。


「2人。大丈夫?」


私は2人に怪我がないか尋ねた。


「僕は大丈夫だよ。」


「私は平気〜」


トーマスは何もないように。クーちゃんは笑顔で返した。


いったいなぜ襲われたのだろうか?

そう不思議に思っているとトーマスが察したのかさっきの男性達について話始めた。


「さっきの人達は位置を売ろうとしてたんだよ。」


「位置。売る?」


何それ?私は益々疑念を深める。

それに続いてトーマスが説明を続けた。


「まず、リーティエはこの博物館の入館料、いや入る為の金額はわかるかい?」


「?」


また不思議な事を言っている。

なんで建物に入るのにお金を取るんだろうか?

私がそれに不思議に思っているとそれを察したのかトーマスが訂正をして話を進めた。


「あー悪かったね。言い換えるよ。建物の維持に掛かるお金や働く人のお金を1人の客から幾ら取るのか分かるかい?」


幾らだろう?

流石に一人に懸かるお金全部を払わせるはずがない。

なら多くの人に払ってもらうようにして。

いくらだ。

よく分からないがパン一個が銀貨2枚で200クィ―ド。

食堂で出る定食が大体小銀貨7枚と銅貨5枚の750クィードだからそれを加味して。


.......他の物の値段を知らない。


そう思ってるとトーマスが続きを話し出した。


「実はこの博物館はタダで入れるんだよ。」


「わぁ!タダてすごい!」


クーちゃんが何か違和感がある驚き方をする。

なんだろう。意図してそういう風に振る舞っているような。


それにしてもタダか..


「何?タダ?」


「タダの理由としては寄付だとかくじとか理由があるけど今はその説明はいいとして。」


そう言って話を戻した。


「それであの男達はタダて知らない観光客、この都に遊びに来た人達に入場料と場所代として売るんだって前に聞いたんだ。」


カンコウキャクて言うのが遊ぶ人なのか。

ここではそういう人がいるのか。

この前朝から寝てる人がいたがそれがここでは許されてるんだな。



「それ、劇場にも居るって聞いたよ。外で列を整理してる人が追い払うのが大変て言ってたよ。」


「つまりこういう話はよくあるから気をつけてて話だね。」


そういうと列は動き出した。


「さ、列が動いたし行こう。」


しばらく前にいる人について行くと開放された門があった。

その門を潜るとそこには正面にはここから見て四角い青い屋根から何か煙突のような物が突き出た建物があり、左右には正面の建物よりも少し小さい茶色の煉瓦の建物が立っていた。

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