1話:TS病って実在するんですね。

 さて、俺が女の子になって一時間が経った。一先ず身体に異常はない。しかし、視界が急に低くなったことで歩きづらさは結構あった。


「義兄さん、歩き方ぎこちないけど大丈夫?」

「………お前、いつもこんなの履いて生活してたの??尊敬するわ。」

「何か、複雑だよ。義兄さんが内股になってもじもじしてるところを見てると。」

「そりゃあ、曲がりなりにも心は男だ。でも、スカートは難易度が高すぎる!!」

「どぉこが、男の子よ!!そんな要素もう下水に流されてるわよ!!」

「そ、そんな!?」


 ショックを受けると同時に、俺は膝から崩れ落ちた。そんな悲しみに打ちひしがれのと同時にインターホンが俺とかなめのいる居間に鳴り響いた。


「………一先ず、私が話をしてくるわ。」

「頼んだ。かなめ。」


 かなめに任せて俺は、ソファに座り込む。近くにあるお茶を啜ってのんびりとしていると、急にかなめが扉を強く開けた、俺はそれにびっくりして………


「あっ。」

「あっ。」

「あっ。」


 カーペットに漏らした。


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 さて、車の中は地獄で漂っていた。メンバーは以下の通りだ。


 朝、女の子になった!!俺(漏らしオプション付き)

 朝、兄が姉になった!!かなめ(兄のお漏らしを目の前で見る。)

 研究員の方。(対象者の辱めを目の前で見てしまう。)


 ………うん、地獄かな?何、カップルが浮気現場視た時の修羅場を傍観している中で急に当事者になってしまったときの気分だわ。そんなこんなで、車の中は本当に地獄だった(大事なことなので2回言いました。)


 さて、研究所に着いた。車の中?ハハハ。そんなことは忘れるんだよ!!

 

「でっかいな~。」

「そうだね、義兄さんこれからいろいろ検診するけど大丈夫なの?」

「別に取って食われるわけじゃないし大丈夫だろ。」

「とりあえず、頑張ってね。」

「おう。」

「それでは、竹中梓様。一先ず身体の方を診察させていただきますので、入ってきてもらってよろしいでしょうか?」

「はい。」

「それでは、こちらへ。」


 研究員の方にしたがって俺は、研究所の中へ入る。かなめも一先ずついていき、別室へ連れていかれた。

 俺は………研究室の中枢へと進むことになった。そこからは、検閲がいくつも入るので取り敢えず、概要だけ説明すると体のありとあらゆるところを触診されては、機械や薬などをを摂取させられて、昏睡していたとか。


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 一日後。研究所のベッドで俺は目を覚ました。


「………気持ち悪い。」


 喉の方から後味の悪い苦みが襲ってきて気分が悪くなった。トイレに行こうとした瞬間に扉を開けると。


「あっ、義兄さん。おはよ~。」

「おう、おはよ。かなめ、悪いんだけど、そこどいてくれ。ちょっとトイレ行ってくる。」

「うん、行ってらっしゃ~い。」


 トイレに向かって俺は、思いっきり、嘔吐した。キツイ。正直、舐めていたが一日ぶっ通しで知らない人に触られて、視線を集めることにストレスが大きくのしかかってきた。

 ある程度落ち着いて、俺は眠っていた部屋に戻ると、白衣を着てどこか気だるげそうな女性がそこにはいた。


「あぁ、戻って来たね。竹中さん。」

「………誰?」

「あぁ、君の主治医兼生活支援担当になった、甲斐麗燐かいれいりんだ。よろしく頼むよ。」

「よろしく、お願いします。」

「さて、これから話すことは内閣府にも通して合って、さらに機密な情報もいくつか出て来るけど、気を確かに持ってね?」

「分かりました。」

「それと、妹さんも、これが終わったらすぐにご両親に連絡して、こちらに来てもらえるように手配してくれないだろうか?」

「分かりました。」


 そう言って、話が一旦区切れて、俺たちの間にはどこか言葉を発することで壊れてしまいそうな間が生まれていた。

 甲斐さんは、そんなこと知らないと言わんばかりに口を開いた。


「さて、今回の竹中梓くんの病状なんだけど、国にいる患者のカルテ全通りを調べても見つからなかったわ。」

「………そうですか。」

「それと、精神状態の診断とかもしたけど心はれっきとした男よ。ただね、あなたかつて精神科での入院経験があるわね?」

「??」


 記憶にないことを言われて俺は首を傾げた。


「………ごめん。今のなしで。」

「あっ、はい。」

「さて、貴方の症状としては突発性性転換障害として国に認められたわ。俗にいうTS化というのかしらね?それで、梓くんの体の状態は健康体そのもの。だけど、身体能力がかなり上がっているわね。元の体の4倍くらいになっているわ。」

「!?そ、そんなに身体の能力が上がってるんですか!?」

「ただ、肺の大きさとかが小さくなってるから、あまり激しい運動はできないわね。それに、貴方の場合、身長が185㎝から143㎝とかなり身長が低くなってるから、体の動かし方とか見直さないと、大けがしかねないわ。」

「………。」


 俺は、ダンマリとしていた。流石に、いきなり走ったり、トレーニングと化したら怪我するのか。まぁ、そうか。


「さて、竹中君には申し訳ないことがいくつかここで話させてもらうわね。」

「まず、この障害は現状治療が見込めないので、性別が女性になるわ。」

「………。」

「下手すると一生女性のままになる。」

「………。」


 そっか。俺はもう戻れないんだ。もう、戻れないのか。


「・・・今にでも、呑み込めとは言わないわ。ただ、徐々にその自覚は持ち合わせていってほしいわ。」

「はい………。」

「それと、ここからが重たい話よ。いい話と悪い話の二つがあるわ。」

「ひとまず悪い話からで。」

「そうね。じゃあ、悪いって程じゃないんだけど、めんどくさい話ね。まず戸籍の性別が男性と女性の両性という扱いになるわ。ただその代わり様々なルールができたのよ。その内の一つが月に二回の検査と面談。他には私があなたの家の近くに住んで変な行動をしないかの監視よ。ストレスが比較的溜まりやすい貴方には不都合かもしれない。」

「………」

「それと、いい話の方は5年の間政府が支援金として月30万円の支給をするわ。それと非課税だから〇〇入って来るわ。その代わり、ギャンブル等には使用できないからそこは注意してね。これは、口座ね。」

「・・・あ、ありがとうございます。」

「まぁ、とりあえず大変なことがたくさんあるわ。一先ず今日一泊して、体調が良かったら明日には家に戻っていいわ。あぁ、それと学校についてだけど、一先ず休学ということで留年も何とかさせない方針にするそうよ。良かったわね、成績が良くて。」


 地味に嬉しい話を聞けたと同時に、重苦しいモノを受け取り、感情の振れ幅がおかしくなりそうだったが、一先ず、俺は一息ついたのだった。

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